うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『その街のこども(2011)』に関する記憶

そんな訳で、今回は『その街のこども』です。
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映画『その街のこども 劇場版』予告偏

カーネーション』の渡辺あやが脚本で。
監督:井上剛と、音楽:大友良英あまちゃんコンビ。
物語の中と実年齢で被災した佐藤江梨子山本未来が...とか

もう、いっか。まあ、いっか。
さんざん、誰かが話してくれてるよね、きっと

83分です。
そんなに長くも重くもないので、おすすめしてみたいと思うのですよ。

そもそも三宮⇄御影間て、どんだけあんのよ?

現・地元民のわたしがバラしますけどね。
歩く距離じゃない。

東京で言ったらそうねえ...新宿⇄阿佐ヶ谷間ぐらい?
しかも、めっちゃ高低差ある。という。*1

途中、けっこう寄り道してるしね。
このペースだと間違いなく、片道2時間はかかってるはず。

三宮からの最終は0:33です。
御影まで行って、また三宮まで戻ってくるという、このキチガイっぷり非現実感を、まずね...
みなさまとまず、共有したい。

5:46からお祈りあるから。て、そら走るわ!走らざるを得ないわ!!!


深夜の歩け歩けの効果

とはいえ、ね。

ガンガン歩いていると、セロトニンが出てくるじゃないですかー
若干、ウォーキングハイみたいな状態にも陥るじゃないですかー

この二人とも、基本ね。
あんま、相手の話聞いてない。

いや、話聞いてないって言ったら、失礼かも知れないけども。
少なくとも、聴いてはない。

親身になって相槌とか、うんうん!わかるーみたいなのはなくって。
そのわりに、相手が途中で話を止めると。
なんでやめんねん?みたいなのがあったりして。

そうそう、真夜中のテンションって、こうなんだよなー。って
歩いてるとつい(あるいは、飲んでるとつい)、ね。
こういうのぽろぽろこぼれちゃうんだよなー。
溢れてきちゃうんだよなー。って

そういうところがすっごいリアルで。

特になにが起きる訳ではないのよ。
だけど、嘘くさくなくて。
わたしはそこが大好きなんです。

んーーー。これ言うと本気で怒られそうだけど。
震災ってね。それぞれの事情があると思うんです。
そこあえてドラマティックにする必要ないじゃん。って思ってるのね。わたしは

だってさ...
親友亡くして、それで壊れちゃったお父さんが怖かった、って言う大森美夏と。
震災景気でボロ儲けした父親のせいで、友達だーれも口きいてくれなくなった中田勇治と。

どっちがしんどい。って誰が言えるよ?

わたしは、言えない。

わたしがこっち来たのなんて、せいぜい3、4年前だけど。
神戸の人口が震災前の数に戻るのに、20年かかったそうです。

日常生活ではあまり感じる機会はないけれど。*2
呑み屋さんとかそういうところでふと耳にすることは、あります。
震災のときはこうだったんだよ、ああだったんだよ、ってお話。

みんなそれぞれ、事情を持ってる。
当たり前だけどね。
それぞれに深刻な、それ。

そんな個人的なお話。
この夜限定で、長々歩いてきたからこそぽろっと出てきたお話。
その特別な時間帯をちょっと覗かせてもらっている感じがするのね。


ふたりの時差の問題について

だからね、結論やそこに至るまでの時差だって。
そりゃあ、それぞれ違うんだろうなーって

大村美夏はね、まだいいよ。
神戸には、追悼のために来てるから。
一応、向き合う覚悟はそれなりにしてきたんでしょうよ。

けど、中田勇治はね、違うじゃん。
彼は、うっかり新神戸で降りちゃったじゃん。
父親のことも、最初は賢いって言ってたけど。
そのうち、いろいろ思い出してきちゃった。噴き出してきちゃった。

少年野球やってたんすよ
んで、さよならホームラン打ったんですよ
地震でけっこう途切れてたんすけど、まあ、久しぶりの試合で
しーーーーーーんってなってて
サヨナラ勝ちしたのに、誰も喜ばへんのですよ
コーチとか監督とかも黙ったまんまで
悪夢やったなーありゃ

今やってる建築士の話だって、そうだよ。
そんながっつり向き合う気なんて、さらさらなかったのに。
つい、考え始めちゃった。きっかけになっちゃった。

当時中1だった大村美夏と。
当時小4で、学校無くなったじゃあ宿題もなしやワーイーーーヾ(´ー`)ノ。・:*:・゚
て思てる中田勇治と。

考える時間だって違う。
そりゃ、着地点も違うでしょうて。

期待するほど、何もないよ?でもね...

何が起きるの?どこで泣けるの?
という気持ちで観ると、拍子抜けかもしれない。

なにもないです。
びっくりするぐらい、なにも起きない。

でも、あの最後のね。
握手しようとして手を出したのに、結果的にハグになっちゃう、あのシーンね。
「また来年」みたいなふわっとした約束をする、あそこね。

あそこわたし、とても好きで。

来年でも。
来年が無理だったら、その次でも。
その次が無理だったら、その次の次でも。
あの二人がまた会えて、またお話できたらいいなーって願ってしまった。

あとは...そうだなあ。
ためしにね。

「1月17日5:46ちょうどをお知らせします」
時報のね。
その1回目と、2回目。
温度を較べてみてほしいの。

全然、違う。びっくりするぐらい、違う。
それでね。そのことでね。
あ。これ、すごく近くで起きてる出来事なんだな、って気づくの。


で、この大友節がまた、ね...

この二人に、寒い夜に。
ぽろぽろ溢れてくるこの懺悔に、正解のない問いに。

大友良英のBGMがはまるんだよね...

優しく寄り添う感じが。
やわこく包み込む感じが。

さあ泣け!やれ泣け!
どやどやどやどや!!!

ってアレじゃないの。

あまちゃんのときも感じた質感なんだけどね。
静かで穏やかで、適度な距離感と余韻があって...

いいんだよなあ。
しみじみ、いいんだよなあ。

*1:神戸の「高低差ある」は、意訳すると「ほぼ山登り」です。御影のおばあちゃんちはだーいぶ山側

*2:三宮に初めて行ったとき、街が新しい!っていうのはわたしも思った