うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『ヒミズ(2011)』に関する記憶

そんな訳で今回は、『ヒミズ』です。
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そうそう、はじめにこれをお断りしておかなくては。

①瓦礫の映像が繰り返し流れます。トラウマのある方にはおすすめできません。
②暴力シーン(主に殴る蹴る)が多めです。お気をつけください。

以上無理だと思われる方は、今回はパス推奨。


映画『ヒミズ』予告編 2012年1月14日(土)公開!

尚、個人的にはこんな気分のときにおすすめと考えます。

①現在、幸福かつ心身ともに健やかである→Yes
②よくも悪くも、自分は普通だと思っている→Yes
③夢なんて持っていないor持ってたけど、そんなもんとっくに諦めた→Yes

その心は

HP、MPともにがっつり持っていかれます

だって、元気ないとき、ウシジマくん読めないでしょう?
そういうことです。

暗く、重いシーンがけっこうな時間続きます。
ただこれ、意味のある暗さと重さなので。
がんばって、最後まで観ていただきたい。

なのでぜひ、体力、気力のあるときに。

モブでよかった。だのに、なぜ

俺は負けねえぞ 俺の志は高いんだ
こんな定番の不幸話じゃ、へこたれねえよ
俺はな、たまたまクズのオスとメスの間に生まれただけだよ

だが、俺はクズじゃねえんだ
おめえらみてえなクズじゃねえんだ
見てろ、俺の未来は誰にも変えらんねえんだ

おめえらみてえなクズにはならねえ
俺はな、立派な大人になるんだ

このシーン、大好き。
観ててとても痛いんだよね...でも、好き。すごく、好き。
痛さ、青臭さ含め、大好き。

有名になりたいとか、お金がほしいとか。
住田はそういう、ギラギラしたのは全然なくて。
ただただ善良な一市民として、世間に迷惑をかけずに。
ひっそり生きていきたかっただけなんだ。

それだから。

父親殺害という「普通じゃない」ことを起こしてしまった後はね。
一度手を穢してしまった自分は、一人殺そうと二人殺そうと同じだ。って
せめて、クズを成敗することで世の中のためになろう。って
そう、思ったんだろうね。15歳なりに

親に捨てられるとか。
学校行けなくなるとか。
1日中働かなくちゃいけなくなるとか。
その辺ぐらいまでだったらまだ、想定内だったから。
15歳でもなんとかなったんだ。

でもここまで来るともう、手に負えない。
1日中考えてぐるぐるしていても、結局出口がないのだもの。

聞こえてほしいあなたにもガンバレ!(© THE BLUE HEARTS

そこで、茶沢さんの出番ですよ。
彼女の夢は、こう。

君の夢は、一生普通に暮らすことなんでしょう?
『俺はモグラのようにひっそりと暮らすんだ』って、
前、先生に言ってたよね?
あたしの夢はね、心から愛する人と守り守られ
最期はニヤニヤしながら死んでいけることです

途中まで、なんてウザいエキセントリックな子なんだろうって思ってたけど。
こういう、ある意味「普通」のことを夢だと語るだけの背景が彼女にはあるんだよね。

なので、ボートハウス*1で住田の帰りを待ち続けて。
自殺しないか、見張っていて。
自首を勧めて。
未来の希望を語ってみせる。
大声で応援も、する。

住田がんばれ 夢を持て
この世でたった一つの花よ
*2

それはもちろん、住田のためでもあるのだけれど。
彼女自身の、夢のためでもあるんだ。
当事者なんだもの...真剣にもなるよね。

さて、一方ね。
この舞台の終幕後についての妄想ですよ。お得意の

住田が収監されている間の茶沢さんは、どうなるだろう?

彼女にも、かなり問題のある家庭環境がある。
友達も少なそうだし。
住田も筆マメな感じしないし...

気づくと、こちら側で茶沢さんを応援しているわたしがいました。

君もたった一つの花だよ。がんばれ!

その他、雑感

■ところで、震災関係あった?これ

ってレビューを、ちょいちょい見かけました。

原作が書かれたのは、地震が起きるよりだいぶ前だもの。
それを園監督がリライトして。
場所と時間を、あそこに移したものだそう。

だから、うーん...これは賛否両論だろうけども。
この内容で、震災の2ヶ月後に撮影始めたことがすごいと思う。いろんな意味で

「勇気がある」とか、そういうことを褒めてるんじゃないよ?
わたしの記憶だと、たしかね...

当時の世間って、すべてのエンターテイメントにかなり厳しかったと思うの。
「生きるか死ぬかのこんなときに不謹慎だ」って気運がかなり強くて。
今だとそこまで...って思うようなことでも。
「配慮がない」「自重しろ」って、すぐ言われがちだった。

あるいは、すべてのクリエイターもね。
これから先、自分が何を発信していけばいいのか?って、
ちょっとぐるぐるしてた時期だったとも思う。
なにせ、現実で起こったことが大きすぎたから。

なのでね。
あの混乱の中でよく、自分の伝えたいこと形にできたなあ...
っていう、そこに感嘆しているの。
しかも、絆とか家族愛とか、安易なそれじゃなくて。

すげー反対されたと思うよ?たぶん
今やらなくてもいいじゃん。って
そこ触れなくてもいいじゃん。って

だけど、わざわざ震災に絡めてまで、監督が言いたかったことっていうのは

「普通」の足元の危うさと。
夢や希望を持ち続けるむずかしさと。
「それでも持たなきゃやってらんないよね!」ってメッセージ。

その辺りかなー?と、わたしは感じたんですけどね。
(※感じ方には個人差があります


■読まずに観てた

あ。原作漫画のことです。
古谷実は好きなんだけど。
これはまだ、攻めてなかった。

えっと、前回ね。
原作と張り合わない道をゆこうよー的な主張をしてるんですけども。
pinocorita.hatenadiary.jp

それにしてもこのキャスティングって...ねえ?

いや。染谷将太二階堂ふみも、いい役者だよ?
けど古谷画からしたら、違和感あるだろうと

あーでもね。
ラストは原作とだいぶ違うみたい*3って聞いて。

読んでみよう。読んでみたいな。
との想いをさらに強くしたのでありました。

幸福、かつ、心身ともに健やかなるときに

(3,783字)

*1:このロケ地がまた素敵でね...特にボートハウス前の道。あの道の、地の果てから戻ってきた感、めちゃめちゃ物語がある。素敵

*2:この台詞2回出てくるんだけど。2回目、全然違って聞こえる。うまいなーこういうところ。

*3:あの!衝撃の!ってことしか知らないけども