うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『AMY(2016)』に関する記憶

諸々落ち着いてきたので、また再開したいと思います。
ゆるゆる、よろしくねよろしくね。

さて。そんな訳で今回は、『AMY』です。
初の公開中作品です。わーお!

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『AMY エイミー』予告編

尚、個人的にこの作品は、こんな気分のときにおすすめと考えます。

①DIVAだのだの歌姫だの、C・キング、J・ジョプリン、B・ホリデイ、
 E・フィッツジェラルドで間に合ってますごちそうさんと思っている→Yes
②セレブ憧れちゃう!お金持ちいいなーと思っている→Yes
③映画を観た後に立ち上がれなくなる経験なんて、したことがない→Yes

その心は...

ワンフレーズで、虜になってしまう

あなたがもし、彼女の歌を耳にしたことがないのであれば。
どうか一度、ワンフレーズだけでも、聴いてみてほしいの。

一度聞いたら、忘れられなくなる声だから。


Amy Winehouse - Rehab

これで当時23歳ぐらい。

よくいる、若いのに背伸びしてるタイプじゃないでしょう?
テクニックだけで聴かせようとする、それでもなくって。
酸いも甘いも包容するような、ハートウォーミングな声なのね。

肉体は若いが、魂は老成していた

え。人生何周目?ってぐらい、完成されている。
そんな声、そんな歌。

あっという間に、世界中が虜になったの。
彼女の歌をもっともっと!ってなったの。
そうすると、どうなるか...

プライヴェイト?なにそれおいしいの?

パパラッチですよパパラッチ。

日本でも「マスゴミ」なんて、唾棄されているけれど。
あちらのそれは、全く比じゃない。
どこにでもいて、どこにでも入り込んでくるの。

みんな、見てる。
全部、見てる。
そして、それでいて

やらかしたら嗤ってやれ、っていつでも待ち構えてる。

ポケモンショック*1以降、日本では「へやをあかるくしてみてね」なんて注釈がつくことが多いけど。
想像を絶する量のフラッシュなのよこれが。

私の音楽は一般受けしないから
売れたらいいと思う時もあるけど
私は有名にはなれないわ
もし有名になったら対処できなくて頭が変になる

彼女の望みは本当に、
小さなハコで、マイペースに音楽をやり続けていたいだけ
だったんだなあって思う。
もともと、こんな子だったのにね。

わたしなんて、欲深い人間です。

値札を見ないで、買い物してみたいなあ。
山ほど、おいしいものを食べたいなあ。
世界中の好きなところを、旅してみたいなあ。
いい男にエスコートされてみたいなあ。
お金、もっともっとほしいなあ。

毎日こんなこと思ってる。
思ってるけど

ただ、この量のパパラッチに追いかけられ続けて。
意地悪な記事を書かれ続けても尚、正常な精神を保っていられるか?
って言われたら...

かなり、自信がない。

たしかに、当時ね。
この作品には、まったく出てきていないけれど。

酩酊状態でステージに上がったり。
ヨレヨレのふらふらで歌う彼女について。

エイミーまたやらかしたwwwみたいな記事とか動画とか。
あったあった。山ほど、あった。

でも、そうじゃなくて。そうじゃなくて

ほんとの彼女は全部全部、歌に書いてあった

私を知れば世間は理解するはずよ
私は音楽しか能のない人間だって
だから放っておいて 音楽をするから
音楽をする時間が必要なの

改めて聴き直してみると、びっくりするぐらい。
個人的な体験しか、歌ってないのね彼女

男と別れるたび、詞に書くし。
リハビリ施設なんて、やだよー行きたくないよーなんてのも、歌にしちゃう。

実生活しか、書けない。悲しいことも辛いことも
そのままじゃなくて、必ずオチをつけるけどね

これはアレだ。
女友達との酒場あるあるだ。

別れた男がいかに酷かったか?って話をしてて。
そのままじゃ悲惨すぎて、自分もこの場も浮かばれないから。
つい、おもしろおかしく話しちゃう。

でも、聴いてる方もね。
ほんとはめちゃめちゃ彼女が傷ついてることわかってるから。

「大変だったね」って、頭を撫でたり。
お酒を奢ったりするんだ。
「また会おうね、絶対だよ」ってハグし合ったりするんだ。

全然エキセントリックでも、なんでもない。
どこにでもいるじゃない、こんな子。


「席を立てなくなる」って、ほんとだった

彼女の訃報を耳にしたときは、そりゃあショックだったけれど。
ラリラリで無茶苦茶な、それまでの行動を知ってもいたから。

正直なところ、ああ、ついに...って思いも、なくはなかった。
享年27って聞いて、ああ、またその歳か...とも思った。
だから彼女の映画ができるよって聞いたとき、うれしかったけど。
たしかに映画的な人生だったもんね...とも思っちゃった。ごめん、正直なところ

思っちゃったけど。
それ以上だったなあ...。

この作品は、そんな彼女の死を伝説として演出してないのね。
ドキュメンタリーだ。ということもあるかもしれないけど。
貴重な映像が、インタビューが、本当に親しい人たちの愛に満ちている。
そこがまたよくって。

彼女の歌を聴いた瞬間、本物だと思った
まるで65歳の熟練のジャズシンガーみたいな歌い方だ
18でこれじゃ25になった時どうなるんだと思った

改めて、思った。思い出した。
そうだよそうだよ、思い出した。

30になった彼女も、40になった彼女も、50になった彼女も。
ずっとずっと、聴いていたかったんだわたし。
まだまだまだまだ、聴いていたかったわたし。
27クラブの呪い*2なんて、ぶっ飛ばしてほしかったんだわたし。

Twitterでもね。
「終演後、しばらく動けなかった」
って感想をやたら見かけて。
ほんとにー?って思ってたけど。

だってさ。
わたしも含め、劇場にいたお客さんなんて、全員。

最後に彼女がどうなるか、なんてとっくに知ってたはずでしょう?

覚悟の上で、その席に居た訳でしょう?
それなのにね、それでもね...

ほんとだった。
ずっと座って、観てただけなのに。
足ガクガクだったもの。
事実、観終わってから数時間経つのにまだ。

心臓が、コトコト言ってるもの。


待って待って。逝かないで。

これを観てるとね。

彼女が、どんなに周囲から愛されていたのか。
彼らがどれだけ、彼女のことを救おうとしたのか。
そして今も尚、後悔し続けているか。

よく、わかる。
胸が、詰まる。

死にたくなったら、どうぞ頼って。
いつでも、駆けつけるから。

だから、どうかどうか。
先に逝かないで。

何度でも、言うよ。
愛してる、愛してる。

わたしがこんなに大切に想っている、
あなたの身体を、あなたの魂を。
どうかどうか、ぞんざいに扱わないで。

何度でも言うよ。
愛してる、愛してる。

Frank

Frank

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