うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『ハッピーエンドが書けるまで(2012)』に関する記憶

そんな訳で、今回は『ハッピーエンドが書けるまで』です。


映画『ハッピーエンドが書けるまで』予告

尚、この作品は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。

①昨今のキラキラ邦題、及びキラキラポスターにはいささかうんざりしている→Yes
②ラブストーリーって、いまいち感情移入できないんだよね...と思っている→Yes
アメリカ文学に興味がある。もしくは、これからちょっと齧ってみよっかなー?と思っている

その心は...


そういえば。

スイーツ(笑)って、もう死語なんですかね。

最近、滅多に耳にしないし。
ほとんどが「キラキラ」「ゆるふわ」に置換されているような...

まあ、いいや。
なぜこの作品を観る気になったか?って話をまず、聞いてってくださいな。

この作品ね。
今までまーーーったく、ノーマークだったんですけれど。
あるハッシュタグで見つけてから、俄然気になってきちゃいました。

togetter.com

ね。なかなかに絶望的でしょ。
何だよ?100%おんなのこ主義、って

クソダサ邦題案件は、女性映画に限らず、
随分前から問題にされてきたと思います。
が。ここで問題にしているのは、そういうこと"だけ"じゃなくて。

恋愛とピンクとパステルでふわふわにしときゃ、女なんて十分だろ?

これが透けて見えてきませんかー?
はいはい。ナメられてますよー?我々
怒れ怒れー!!!

おかげでこの作品も、ね。
この邦題のせいで。
このダサピンクのせいで。
まーーーったく、引っかかってこなかったよ。

原題は、『stuck in love』。
stuckには「行き詰まった」とか「身動きが取れない」と言った意味があるそう。

スリード、こわいよこわいよ...

まずね。このポスター

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女の子の横顔がメインになってますよね?
予告でも、この女の子が一人称語りしていますよね?
まるでこの女の子がハッピーエンドのお話を書くことができないような、
「行き詰まった」作家のような印象を与えるけれど

主人公、3人います。
彼女の他に、父と弟。
しかも全員が作家で、全員行き詰まってる。

父親ビル・ボーゲンズは、文学賞を何度も受賞したことがある作家です。
しかし現在は新作の執筆よりも目下、分かれた妻のストーキングに忙しい。

娘サマンサは、「愛は避けること」をモットーにしている大学生。
無神論者のリアリストで、わりとイージーにいろんな人と寝ます。

反面、弟ラスティはロマンチストです。
うぶです。初めてのセックスどころか、初めての失恋すら、まだです。

この3人がそれぞれ、愛に出会って変化したり成長したりする物語です。

そんで、また。
オープニングが素敵なんだよね...。
3人の、それぞれの小説の書き出しから始まるんだけど。
どの冒頭にも個性があってね...ものすごく、「っぽい」の。

それでいて。
続きが読みたくなるようなフレーズなんだよね...。
ぎゅ、っとつかまれます。のっけから

じゃあ、良い作家の必須条件って何よ?

作家とか、漫画家とか。
いや。すべての「もの」を作る人たちは、すべてそうかな。
「魂削って作ってる」とは、よく言われることですけれど。
そのことを、この作品の中では、ちょっと違った言い方をしています。

作家は、人生経験が命だ
経験してこい

よくほら。
「自分が成長できる恋がしたい」とか言う人、いるじゃないですかー。

狙ってできるかよ、恋なんて。
恋は「する」もんじゃないから。
うっかり「落ちる」ものだから。

だから。
気づいたら、始まってるし。
気づいたら、自分が変わってるし。
気づいたら、成長もしてるかも。

真剣だったらね。

恋愛だけじゃなくて。
仕事でも、家族でも、友人でも。
他とがっつり関わると、嫌でも人間変わるんだよ。
っていう、父ちゃんはそれを言いたかったのでは

なので。
ジャンルとしてはたしかに、ラブストーリーになるのかもしれないけれども。
わりと、骨太な仕上がりになっております。
安心して、ご査収願います。

引き込まれる...かな???

でね、でね。
作家同士の話なので。
自然と、好きな本や作家の話が多くなります。

どれも、これも、気になるんだけど...
たとえば、スティーブン・キングの『IT』について。

一見難しそうだけど
最高の読書体験になるよ
 
怖いやつ?
 
怖いけど、すべてが詰まってる
引き込まれて、最後は泣くよ

なにそれ読みたい!!!

いや。「最後は泣く」とかはべつにいいんだけど。
そんな話だったっけ?と思って

映画は観たことがあるんですよね、『IT』。
けどわたし、怖いのがだめで。
しかも、ピエロ恐怖症気味でもあるので。
側溝からペニーワイズが覗き込んでくる、あのシーンだけでびっくりして、
リモコンぶん投げてしまった
ので。
ラストまで観れてないんですよね。

本だったら...だいじょぶ...かな?
がんばって、最後まで読んでみようと思います。

IT〈上〉

IT〈上〉

IT〈2〉 (文春文庫)

IT〈2〉 (文春文庫)

行間も、観てみて

また、本だけでなく。
音楽に語らせるシーンも多いんです。
これがまた、どれもこれも心憎い感じで。

たとえばね。
ラスティが初恋の彼女を見るたびに、頭の中で流れるっていう曲がこれです。

I've Just Seen A Face / Beatles Cover ( 夢の人 ) Home Recording

かわいい。

姉にも「おセンチね」って茶化されてるけどね。
かわいい。

で、「愛は避けてきた」サマンサにとって。
あとあと重要となる夜で流れている曲が、こちら。


Elliot Smith-Between The Bars

で。こうくる。

「今、すごく怖いの」
「分かるよ」
「傷つきたくない」
「傷つけないよ」

「傷つけないよ」。言われてみてえええ

...失礼。取り乱しました。
気になったらぜひ、歌詞の意味も調べてみてくださいな。
そこで語っていることも、すごく大きいので。

たまに、ほら。
すごく集中して、歌を聴いていると。
詞の内容が、自分の経験してきたことや現状とリンクしていることがあって。
思わず、感情移入しすぎたり。
挙げ句の果てに、涙が出てくることがあるじゃないですか。

あの感じ!
あれがよく、表現されていると思うんです。

こういうのこそ、
字幕追わなくて観ることができる人の方が楽しめるんだろうなあ。
行間もいいです。作家同士の話だけに!

映画にとって、音楽ってやっぱり重要なのね。
今さらだけど、改めて。

Stuck in Love

Stuck in Love


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それにしても、クソダサ邦題問題、罪深いなあ。

仮に、この先わたしが突然「...えっ?」ってタイトルのものをプッシュしてきたら。
とにかくもう、そのときは、そういうことだから。
「...えっ?」って言わないで。
ためしに、聞いてみてみて。