うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『幸せなひとりぼっち(2016)』に関する記憶

(2016年の総括も年始の挨拶も飛び越えて、しれっと再開)
そんな訳で今回は、『幸せなひとりぼっち』です。


不機嫌じいさんが…!映画『幸せなひとりぼっち』予告編

尚、この作品は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。
①最近、暴走老人に悩まされすぎて辛い→Yes
②毎日笑顔で過ごすとかやってられっかーい!!!→Yes
③実は、ずっと恨んでいることがある。復讐したい人がいる→Yes

その心は...



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まずはね。
この作品のキャッチコピーに一言もの申したいんですけど、いいすか?

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実は優しい?"不機嫌じいさん"
孤独な男の人生を笑いと涙で温かく包んだ感動の物語!

また、それか!
感動の押し売りか!!!

まあねえ...

実は優しいツンデレおじいちゃんに萌えたり*1
近隣住民の優しさに涙したり。
北欧カワイイにきゃわわ★したり。

よくある展開だなー
って、観てる間は思ってた。
感想訊かれたら「まあまあよかった」って答えるだろなー
って、観てる間は思ってた。

でも、何日か経ってからじわじわ気づくことがいくつかあったので。
忘れないように、そのことたちを書き留めておこうと思うのです。押忍


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わたしは仕事柄、苦情に対応することも多いのですけれど。
ここ数年、目に見えて老人のクレーマーが多いです。
最近の老人は昔に較べるとだーいぶ若いし、元気だからね...。
無駄に時間も体力もあるだけに、本音を言うととても厄介です。

それでね。
老人がなぜにそこまで暴走するのか?ということに関しては

1).リタイヤしたら急に暇になって、家庭にも居場所が無い。
  パトスのぶつけどころが無い。
2).加齢により、集中力や注意力が落ちてきていることを認められないため、できなくなることが多くなり、癇癪を起こしやすい。
3).現役時代にそこそこのポストまで上り詰めた層であり、ちやほやされ癖が抜けていない。

とかね。
他にもいろいろいろいろ、教えてもらったんだけど
結局まあ、「理解してあげましょうね」って結論になるんです。
なるんだけど。

正直なところ、あんま納得できなくてね...
「いずれ行く道」とか言われても。
「ああはなりたくない」としか、思えない。
ごめん

主人公のオーヴェもね。
冒頭から、かなりやばいクレーマーです。
自分で間違った受け取り方、使い方をしているだけなのに。
自分の行動を省みるより、相手にキレてる。

でもなぜか、近隣住民が優しいんだよね...。
話しかけたって、難癖つけてくることはわかり切ってるのに。
ランチに誘う人がいたり。
「あれ貸して」「これ手伝って」
と何やかんやと声をかけてくる。
で。何かしてもらったら、お返しにお料理をお裾分けしたり。

冒頭からのオーヴェの人となりを見たら、ね。
わたしなんて、絶対に関わりたくないですごめんなさい。
挨拶とか会釈ぐらいはするだろうけども。
わざわざこっちからコンタクト取ろうなんて思わないもの。

なので。
なんであそこまで彼らがオーヴェにかまってあげてるのか?
っていうのは、あんま感情移入できなくて。
けっこう、謎な感覚でした。

物語進行上のアレなのか。
福祉が発達しているお国柄の余裕なのか。

はたまた...

わたしに人の心が無いのか。ははは*2


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でも一方、ね。
オーヴェみたいにならない老人も、たくさんたくさんいるじゃないですか。
愛されるお年寄りだって、たくさんたくさんいるじゃないですか。

何が違うのよ。
どこから差が出るのよ。

っていうのずーっと謎で

わたしね、これもう20代の頃からずーっと言ってるんですけども。
「かわいいおばあちゃんになりたい」って野望があるんですよ。
「あーおもしろかった。ばいばい」って死にたいんですよ。

だから、この点には昔からすごく興味があって。
それが一つ、解けたような気がする。
というのが、今回最大の収穫。

オーヴェ
今を必死に生きるのよ

はい。これはオーヴェの奥さんの台詞なんだけどね。
不幸な事故があって、いろいろ失った後に。
各方面に向けて怒りまくっている夫に対しての、妻の台詞。

不器用な人だからねえ。
それは、彼なりの愛だったのかもしれないけれど。
そのことも彼女は重々承知だったんだろうけれど。

でもねえ、でもねえ。
仮にお金をもらったって、何も変わらない。
誰のせいなのか、誰が悪いのか、はっきりしたところで。
ハンデを背負っていくことは、何も変わらない。
その先も、人生は続くのだもの。

彼女はある時点から、それを覚悟したんだと思うの。
起こってしまったことはもう、過去のこと。しょうがない。
「今」の自分の人生を充実させよう。
「今」の自分がしあわせになれるようにしよう。
過去じゃなくて、「今」にフォーカスしよう。

って

その、妻が言わんとしている意図をね。
オーヴェはちゃんと、汲み取ったんだよね。
だから、直後の行動がなんとも建設的でうつくしいの。

わたしがいちばん泣けたのは、子どもとのふれあいでも猫でもなくて。
実は、ここでした。


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とまあ、奥さんがめちゃめちゃ素敵な人なんです。
めっちゃ、大人。
めっちゃ、知性的。
それでいて。
めちゃめちゃ、チャーミング。

たとえば、独身時代にね。
彼女が立て替えてあげた列車賃を、オーヴェが返そうとするシーンがあるんだけど。
お財布を出しかけた彼を制して、首を振りながらこう言うのね。

食事がいいわ

なにこのお洒落な切り返し。
じゃあデートしますか。ってなるじゃない。
デートせざるを得ないじゃない。

手をつなぐときに人差し指を差し出すところも、
めちゃめちゃかわいいの。

オーヴェ、あんたにゃもったいないよ。


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それからね、それからね。
彼女の笑顔が、ものっ凄いの。

もともと、ショートカットが似合う美人で。
歯とかもめっちゃきれいなんだけど。

そうじゃなくて、それだけじゃなくて。
笑顔がすごく、大きいのね。
大きくて、力があるの。

信念も誇りも優しさも。
愛も希望も包容力も。
ぜーんぶ含んだ、ものっ凄い笑顔
なのよ。

にこにこ、キラキラ★ってもんじゃないの。
。・:*:・゚びかーーー!!!。・:*:・゚って笑顔なの。

そして、彼女の凄いところはね。
出てくるカットが、ほぼずーっと笑顔なのよ。

真に「強い」っていうのは、折れない太さとか屈強とかそういうんじゃなくって。
たぶん、彼女のように。
いろんなことがあっても、受けたり、流したり。
柔軟にしなやかに対応できる。ってこと
なのかも。

女の子は笑顔でいた方がいいよ。ってよく言われるけどね。
余計なお世話じゃ。
笑いたいときに笑うわって思ってたけど。

こんなふうに笑える、強い人になりたい。
のん。
毎日、こんなふうに笑える強い人になりたい。


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でね。こういうふうに生きてると。
さすがに、周囲への影響力も凄いみたいでね。
これは彼女がいなくなった後の話なんだけど...

オーヴェが隣人に運転を教えていて。
一つのミスに尻込みして、フリーズしちゃってる彼女に対して
叱咤激励するシーンがあるんだけど。
これがまた、凄い台詞で。

自分を誇れるような、自分の力を信じられるような。
力と勇気がぶわわわわああああーーーー!っと出てくるような。

凄い台詞なの。
あれもう、奥さんが乗り移ったみたいだった。
凄い言葉の力だった。


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近隣住民に移民がいる。ゲイがいる。
要介護レベル3ぐらいの老人もいる。
病気の猫の介抱のために「デブの保温力なめんな」っておもむろに脱ぎ出すデブもいる。
そういう意味でも、とってもカラフル。
「カワイイ」だけじゃない、スウェーデンの現在も垣間見ることもできます。

その辺りも、ぜひぜひ

幸せなひとりぼっち (ハヤカワ文庫NV)

幸せなひとりぼっち (ハヤカワ文庫NV)

*1:ツンデレとか萌えもかもう死語なの?だいじょぶ?

*2:わたしの愛は、局所集中型なんだよ。範囲を絞ってばばばばば!って出してんだよ。わかってほしい