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うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『14の夜(2016)』に関する記憶

そんな訳で今回は、『14の夜』です。


映画『14の夜』 予告編

尚、この作品は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。

①かつて童貞だった、もしくは、現在進行形で童貞である。→Yes
②夏が好きだ!いなたい昭和の夏休みが好きだ!好きだ!好きだーーー!→Yes
父親のことが恥ずかしい→Yes

その心は...


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わたしは古今東西問わず、
こじらせている人たちの物語を心から愛しているので。
好きな作品の童貞登場率が異様に高いんです。

この、妄想の広がり。
この、暴走っぷり。
これだよこれ。リビドー万歳。

『14の夜』というのは、明らかにそう。
オザキのあの名曲を意識したタイトルだと思うんだけども。
こちらはまた。
校舎の窓ガラス壊して回るような属性とは対極でね...

だからつまり、俺たちには何もウリがないんだよ
不良系でも文化系でも運動系でもなく
限りなく、無所属っていうか

1987年の8月4日。
終始、冴えない、パッとしない。
14歳男子たちの、夏休みのある1日の物語です。


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そんな彼らなもんで。
夏つっても、もちろん。
ウェーーーイ!!!という訳にはいかないよね。

「お前、おっぱい吸ったんか」
「あ、うん」
「どんな味だったんだよ、おっぱい」
「え、チェルシーっていうか」

 
チェルシーですってよ奥さん!!!
 
チェルシー」と答える単体童貞も、かわいいし。
チェルシー」と聞いてどよめく塊童貞も、かわいい。

撃たれてしまうよ。はあ


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あとね、あとね。
昭和の空気の再現がすごいんだよね。

実家の作りにしても、そう。
柱とか古くて、家族の手垢?とかであんな感じで黒光りしてた。
謎置きものとか謎抽斗とか、あったあった。
仏壇のにおいとかするの。
あんな感じ、あんな感じ。

ジュースの250ml缶にしても、そう。
まだコンビニができる、全然前だもんね。
夏の夜は、自販機の灯りの前でよくたむろってたもんね。

ビデオ屋にしても、そう。
1回借りんのに1,000円とか、してたしてた。
すっかり忘れてたけど。

昭和のイケてない男の子も、ね。
「おかんが買ってきた」感丸出しの、あんなTシャツ着てた着てた。
ヤンキーのお洒落服にしても、ね。
全身白の特攻服とかトラ柄とか、まさにあんな感じだった。

エロ本にしても、そう。
昭和の女優さんはまだ、肌色を白飛ばししてなかった。
フォショもなかったし。
少し暗くて、湿度を感じるような。
やたら生々しい質感の肌だった。

今みたいに、えっ?こんな普通のかわいい子が脱ぐの?
って感じじゃなくて。
きれいな人なんだけど。
ちょっと、化粧が濃かったり、
ちょっと、バタ臭い感じだったり。
ちゃんと、夜のにおいがする美人さんだったんだよね。

そういうのいちいち、ね。
あはは。こんな感じだったなー
あはは。なつかしいなー
って思いながら観てたら。
忘れてたいろんなにおいが、むうっと蘇ってくるみたいだった。


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それから、あとね。
このお父さんがまた、酷いの。
一から十まで、ずーっと情けないの。
何一つ、尊敬できない感じなの。

いやでもね...今をときめくバイプレイヤーの光石研がこれよ?
このザマよ?

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もう、すごい、
完全に、ダメオヤジにしか、見えない。

無職特有の目つきも、そう。
てろってろのアンダーシャツも、そう。
空気の読めなさとかうんこみたいなプライドも、そう。
やること為すこと、表情、言葉、行動...終始ずーっと、カッコ悪い。
イライラするぐらい、カッコ悪い。


でもね、でもね。
じゃあ「カッコ悪い」はどこから来るの?って話でね。

待て、おい。
お前がカッコ悪いのは、父さんのせいじゃねーぞ
お前自身のせいだよ

そうなんだよね...。
タカシの頭ん中ときたら。

「父さんがこんなんんだから、しょうがない」
「あいつには勝ってる」
「あいつに較べたら、まだましだ」

... ...
そんなんばっかり。
ずーっと、そう。

そこだよ。
おめーがモテねーのはそこだよ!!!

で、悪いことに。
この思考は、癖になるんだよね。

「イケメンじゃないから」
「背が低いから」
「金持ちじゃないから」
「いい大学出てないから」
「仕事忙しいから」
「できた嫁じゃないから」
「もうおっさんだから」

... ...

女だって、そうだよ?

「美人じゃないから/かわいくないから」
「太ってるから」
「センスがないから」
「旦那の甲斐性がないから」
「もうおばさんだから」
「親の面倒を見なきゃいけないから」

言い訳なんて、星の数ほど。
言い続けてると、癖になる。

一生、言ってろ。
そいで、かっこ悪いまま。
そのまま、ばいばい


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いやいや、さすがにタカシも、ね。
そのままじゃ、終わらないよ?
一瞬だけキラッと光る、カッコ良さ?らしきもの?みたいなのがあって。

これがもう、すごい。
ボロッボロなんだけど。
一周して、ちょっとカッコ良く見えてくるの。
めっちゃ、泣けた。感動した。

ひのきのぼう一本でも挑む男って、カッコ良くないですか。

最終的に、それで最後まで立ってたらいちばんだけど。
無念に散っても、抱きしめてあげたい。

たとえ、動機が不純であっても。
たとえ、それが「おっぱい」であっても。


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さて、わたしがこれを観ようと思ったのも。
『百円の恋』が良すぎたのが、きっかけです。
足立紳監督は『百円の恋』の本を書いた方なの。

pinocorita.hatenadiary.jp

いやあ。これが初監督作とは末恐ろしい...。
一子のときも、思ったけど。
イケてない人間のダメっぷりの描き方と。
結果、勝てなくても過程でキラッと光るドラマの作り方と。
観てるとすごく、勇気が湧いてくるんだよね。

上では偉そうなこと言ってるけど。
ほんとはわたしも、選ばれない側なんだ。
ほんとはわたしも、ひのきのぼうしか持ってないんだ。

だから、他人事には思えなくって。

ほんとは、同士なんだよね。
ほんとは、戦友なんだよね。
だからこういうドラマにすっごく、勇気づけられるんだ。

主演の犬飼直紀くんも、すっごくいいんです。
なんと彼、これで映画初出演らしいんですけど... なんだろう?
柳楽優弥が出てきたときと、同じぐらいのインパクト。

なんせ、顔芸がとてもよい。
バリエーションがいろいろあって、とてもよい。

顔の輪郭なんかはね、まだまだ子どもの顔なんだけど。
黒目がちで、睫毛ふっさふさで、これはいい切れ長...
近々ブレイクすると睨んでいます。将来たのしみ★


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あとねあとね。
エンディングも、すっごくいいの。
ED曲も、当て書きしたんじゃないの?ってぐらい、びしーっと合ってるし。
スタッフロールの間で流れてる、スチール写真がそりゃあもう、いいの。

見事に、本編の隙間の空気を切り取ったような画で。
そうだよね、そうだよね。
この家族だったら、この友達だったら。
あのシーンとあのシーンの間に、おそらくこんなことしてるよね。

みたいな画がたくさん出てくるんです。

もうねえ、至福。
わたしがカメラやる。ってせいもあるんだけど。
おっきいスクリーンでいい写真見られるの、しあわせすぎる。

だからどうぞ、キュウソネコカミが流れても。
客電点くまでが、作品です。
どうぞ、席は立たないで。
最後まで、たのしんで。