うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

【R-18 閲覧注意】『ANTIPORNO(2017)』に関する記憶

そんな訳で今回は、『ANTIPORNO』です。

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映画『アンチポルノ』予告編

尚、この作品は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。

①「センスが女っぽい」「女性脳の方が強そう」とよく言われるし、自分は女性の味方だよ?→Yes
②原色が好き。うちの壁塗っていいなら今すぐ塗りたいし、『ELLE DECO』でデザイナーの部屋とかいくらでーも見ていられる→Yes
③どちらかといえば、純文学が好き→Yes

その心は...
(尚、劇中の台詞については耳コピであるため、正確ではない可能性が含まれます。ご了承ください)


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言うてもわたし、ロマンポルノってそこまで観たことある方じゃないんで*1
ロマンポルノの印象って...どうなんだろ。
掛け違えた愛とか?哀しい女の性(さが)とか?
そんな辺りのテーマが多そう
って印象があります。
もし違ってたら、ごめんなさい。

あと、人妻多め、攻めプレイ豊富ってイメージもある*2んですけど。
これはほんと、わたしの先入観というか貧困なイメージによるものだと思うので。
具体的なご指摘を、おすすめの2、3本も添えてお願いできれば
と思う次第であります。

さておき。
これは、にっかつの以下の企画による作品です。


【映画 予告編】 ロマンポルノ・リブート・プロジェクト

縛りは、これだけ。

10分に1回の濡れ場♡
あとは自由 !!

なもんで、これもね。
開始20秒でおっぱいが出てくるので、
なんだかそういう気持ちは麻痺してきちゃって。
わりと、最後までまじめに観ちゃいます。


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この作品は、何度かスイッチが入る箇所があって。
突然、登場人物のそれまでの上下関係が逆転したり。
突然、観客が現れたり、作り手が見えたり
します。
あと、同じ台詞が全然違って聞こえたりとかね。

その見せ方が、お芝居っぽい手法なんですけどね。
慣れるまでちょっと、ん?ってなる。
取扱注意のイルなメンヘラ話に見えなくも、ない。

この作品のテーマは、「女の不自由さ/閉塞感」です。
むしろそれしか、描いていない。
そのことに気付くと、俄然観やすくなるんです。

ちっともうまくやれてない
 
でも私のせいじゃない!
これは私の人生じゃない!

この国の女は誰一人として、
自由を使いこなせていないの
(中略)
この国の女は、心を使いこなせないし、
体も使いこなせない

などなど、などなど。
パンチラインがてんこ盛りで。
びっしびし、効いてきいてくる。
いちいち、やばい。

特にすごいなと思ったのが、ヒロインが18歳のところの下りなんだけどね。
今日子は、両親のセックスを何度も見てる。聞いてる。
自分の親も含めて、男と女がセックスするのは気持ちいいからだってことなんて、とっくに知ってるんだけどね。

どうして、女がそれを口にしちゃだめなの?
知ろうとしちゃだめなの?
って両親に訊くシーンがあって。

そこでの会話が、やたらとちぐはぐなのね。
おそらく、意図的に。

そこで感じる違和感、答えになってなさが、
女が抱える矛盾の表現にもなっていて。
まあ見事なの。

年頃になるまでは、女の子って。
性については、見ちゃいけません口にしちゃいけません。
興味を持っちゃ、いけません。
って、しつけられているのに。

お父さんお母さんたち、気持ち良さそうじゃん。
実はみんな、セックスしてんじゃん。
ん?なんで?って

で、成人になった瞬間、いきなり男からエロを求められる。
ん?わたしどうすればいいの?って

そういう「ここがヘンだよニポン女性」みたいな諸々がね。
男性の監督がわざわざ見せてるっていうのがもう、こわい。

なんで知ってんの???


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それから、セットと衣装が素晴らしいです。
メインのアトリエが黄色、トイレが赤、ベッドのシーツが真っ青。
といった具合。
大概のものが強い原色なの。夢に出そう

今日子の下着なんか、どピンク
だもんね。
それでいて、紐と裏地がスカイブルー。
かわいすぎて、んんんんんーってなる。(※伝われ

換気扇から漏れる光とか。
換気扇から流れるしゃぼん玉とか。
顔や体や床に落ちるブラインドの、ストライプの陰とか。

すごーく、綺麗なんだよなあ。

実家のシーンになると、若干の生活感も出てくるんだけど。
そこにだって、優雅でクラシカルな食卓の横にいきなりボールチェアが登場したりする。
違和感バリバリ。たぶん、意図的に。

はーあ。美術さん、衣装さんの仕事に惚れます。
プロすぎる。
至福


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園監督はわりと、純文学っぽい台詞も書く人なんですよね。
たとえば、こんな

憂鬱すぎる日曜日
死ねない水晶の目をした、哀しい紫の売女*3
お前は売女か
売女になれるのか

ね。すごい。
一見して、なに言ってるかわからない。

「○○とは▲▲のメタファーであり...」みたいなかっこいいこと言おうとして。
今わたし、自分のお脳をフル回転させてるんだけど。
このヴァース自体が、女性の不自由な現状の暗喩で。
「売女」だけが自由の象徴なんだろなーたぶん

ぐらいのことまでしか辿り着けなくて。

「言葉で酔わすのがリリックだろ?意味なんか気にすんな」
っていう、やんちゃなちびぴのこが大きくなり始めているので。

投げます。

耳に、やばい。
舌で転がして、やばい。
脳幹が熱くなる。心の臓に火が点く。
とろける。ただれる...
ああ、ああああ

うつくしい言葉とは、それだけでポルノです。

「死ねない水晶の目をした〜」なんてフレーズね。
パッと出てきますかこないでしょう。

園監督は、少し前にTwitterで大暴れしてて。
あいたたた...ってなってたけど、そういうところも含めて。
「全身で生きてる」って感じがしていて、大好きなの。


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しかし、この作品。
筒井真理子がまあ、やばいです。なにこの化け物
演技のレンジの広さが凄まじいの。
もともといろんな役柄を演れる役者だとは思うんだけど。
この作品は1本の中で、真理子をいろいろ堪能できるんです。

すごいの。スイッチ入るとガラッと変わるの。
同じ皮をかぶった、まったくの別人に見える。
同じ容れ物で、同じ台詞で、こうも違うのか。

真理子を観に来て。お願いします。
すんごい真理子を見せます。
期待して来て来て。

真理子を観に来た。なに魅せてくれんの?
それだけでも、お腹いっぱいにして帰します。
期待して来て来て。

主演の冨手麻妙もね。
最初のうちは、大袈裟すぎるように感じられて。
小劇場の新人俳優かよ?
ってなるんだけど。
そのうち物語の設定がわかってくると、あんまり気にならなくなる。

なので。
あー元AKBのお嬢さんね(ふふん
って感じでもないです。
園作品の主演たるもの、腹すわってない役者だったらまずいでしょ。
めちゃめちゃ、体張ってる。

私の体はポルノじゃない
早くポルノにしてください
 
私の体はいやらしくない
早くいやらしくしてください

最後なんて、絵の具?ペンキ?が目にも口にも入りまくってるしね。
これは相当、キツい撮影だったでしょう。
がんばったがんばった。
よく、がんばった。

上映時間だけ見ると78分とあって、あれ。短い?って思うんだけど。
いやいや、どうして。
見応え、あります。
3時間ぐらい観た後のお腹いっぱい感ある。

企画が企画なもんで、期間が短いことと。
上映館が限られていることが難といえば難ですが。
わざわざ観に行く価値は、あります。

2/17までです。ぜひぜひー

*1:息子の担任に調教される人妻の話なら、観たことある。なんか、沢蟹がいっぱい出てきた

*2:全部沢蟹のせいだ

*3:この作品における「売女」は「純粋すぎて壊れそうな心を抱えている女」とされているので、必ずしも蔑称ではないはず