そんな訳で今回は『20センチュリー・ウーマン』です。
尚、個人的にこの作品は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。
①実は、マザコンである⇒Yes
②「女って、めんどくさいなー」と思っている⇒Yes
③趣味に救われたことがある⇒Yes
その心は…
(※劇中の台詞については、いささか心許ない記憶に頼ったものであるため、正確ではない可能性が含まれます。ご了承ください)
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この作品には、3人の女性が出てくるんだけどね。
それぞれ、めんどくさくて、厄介な女性たちです。
ええ。褒めてます、最大級に。ええ
まず、お母さんのドロシアからね。
指を握りしめるジェイミーに 私は言った
人生は巨大で計り知れない
動物もいる 空 大都会 音楽 映画
あなたも恋におちたり
生きがいを見つけたりする
この舞台は、1979年のサンタバーバラなんだけど。
当時*1、40歳で初産ってなかなかだと思うのよ。
1924年生まれのドロシアはね。
少女時代の夢は、空軍パイロット。
だけど、パイロットになる勉強をしているうちに、戦争が終わっちゃって。
結局、製缶メーカーに勤めるんだけど。
それでも、女性初の製図室入り。
"健康的な"セーラムと
"今風の"ビルケンシュトックを愛用
ウサギの物語を読み
ウサギを掘った
デートはずっとしていない
現実主義者で、勉強熱心。
疑問をそのまま寝かせたり、しない。
セーラムを吸うときだって、すごく姿勢がいいの*2。
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そんな、かっこいいお母さんなんだけど。
息子も、思春期なもんでね。
悩んだ末、息子の世話を2人の女性にも頼むのね。
あなたは
外の世界のあの子を見られる
うらやましいわ
一人は、下の階に住んでいる住人のアビー。
彼女は、子宮頸がんを宣告されているカメラマンで。
パンクミュージックが大好き*3。
おそらく、この中ではもっともアウトローなタイプかと思われる。
彼女には
「あなたの生き方や、興味のあるものを見せてあげて」
とお願いするの。
音楽も、ダンスも、クラブも、アートもね。
わたしも大好きだけど。
「なくても、死なない。人生が無味無臭になるだけだ」
って思ってた、今まで。
撤回します。
なくなったら死んじゃう人も、いる。
正確に言うと、物理的には死なないんだけど。
概念的に、死んじゃうの。
人として、抜け殻になっちゃうの。
だってね…
アビーには「悲しいときには踊る」という習性があるんだけどね…
あれは、すごく、必要な行為だ。
生きていくために、必要な行為だ。
ここに入れたのは
10代の頃に聴いていたら 楽になれたと思う曲ばかり
だから今聴いてくれれば 私よりずっと幸せで
物事が見える人になるはず
音楽や、ダンスや、アートでなくても、そう。
誰かにとっては、アニメが。
誰かにとっては、ゲームが。
誰かにとっては、女の子とデートすることが。
クラブでなくても、そうだよ？
コミケがなくなったら、死んじゃう人。
わたし、いっぱい知ってる。
ゲーセンがなくなっちゃったら、やばい人。
わたし、たくさん知ってる。
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もう一人は、息子の幼馴染みのジュリー。
彼女に頼むのは
「ジェイミーのことは、あなたがいちばんよく理解できるわよね」
という理由から。
彼女は17歳で。
母親とあんまりうまくいっていなくて。
もっとイカれたい！というために、ガンガン男の子と寝る。
そんな女の子。
あーはいはい。メンヘラメンヘラって思ってると。
一概に、そうでもなくって。
私の考えでは 強さが何よりも大事
傷つきやすさや繊細さより
幸せであることより大切
強さがあれば あらゆる感情に耐えられる
自分で、選択して、そうしてるの。
能動的ビ●チなのね。
これはこれで、かっこいい。
私は感じない 友達も皆そう
なぜセックスを？
他に理由があるの
相手の私を見る目
カッコ悪いほど必死な姿
それに相手の体
すみずみまでよく見られる
においも感触も
やればわかる
2回に1回は後悔するけど
じゃあなぜやるの？
後悔しないときもある
なにか嫌なことがあった夜には、ジェイミーの部屋に忍び込んで。
隣で、眠るの。
でも、眠る"だけ"。
天使みたいな顔して、眠る"だけ"。
なんだその生殺しみたいなの。
ずるい。
ずるいけど。
ずるいけど。
鼻を触ったり、腕を撫でてもらったり。
笑いながら、おしゃべりしたり。
そんで、眠たくなったら眠る。
ただ、ただ。
そういうこと"だけ"できる男の子がいてほしい。
っていう…それは、わかる。
ものすごく、同意する。でも
ちょっとジェイミーだけに話すね
セックスする気のない女を
隣に眠らせるなんてダメ
自信が奪われちゃう
うん、ごめんなさい。
仰る通り、その通り。
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でね、でね。
ただでさえ、思春期まっただ中なんだけど。
いかんせん、歳の離れた母親なもんだからね。
感覚のズレが、いろんなところに出てくるの。
一つは、音楽。
ルイ・アームストロング好きの母親が
パンクミュージックを理解しようとするんだからね。
そりゃあもう、大変よ。
きれいに演奏できないの？
きれいな音楽は社会の腐敗を隠す
でも、ドロシアのえらいところはね。
安易に禁止したり、disったりしないところ。
ちゃんと、実際に聴いてみる。
聴いてみて、頭で理解するのが無理だとわかったら。
身体で感じてみようとしてみる。
そういう場を体験しようとしてみる。
いろんなことを、試してみるのよ。
その姿勢がすごく、素敵で。
少しコミカルで、チャーミングなの。
「わたしの好きなものとは違うけど。
今、世界はこうなってるのね」
そのことを知ろうとする姿勢は、いくつになっても大事だよね。ね。
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もうひとつのズレは、思想かな。
ここではわかりやすく一つの例として。
女性運動やフェミニズムの思想について、描かれているのね。
たとえば、そうだなー？
そうそう…
親がいるところでセックスについて話すの、気まずいでしょう。
夕食の席で生理の話とか、ちょっとどうかなって思うでしょう。
でも、フェミニズムや創造って観点から考えると。
日常から普通にそんな話ができることは、本来理想的な訳で。
そういう行き違い感が、ね。
なんとも笑えて、泣けて。
考えさせられるの。
男同士のセックス話は
もし違うと思っても合わせといた方がいいよ
男は否定されるのが嫌いで、幻想を好む
わかるー。
主語がっつりデカいけど、わかるー。
でも、ジェイミーだって。
このがっつりデカい主語に対して、反撃するんだよ。
ちゃんと、主張するんだよ。
男は大抵、解決に躍起になるか、何もしない
解決できないときに寄り添うのが苦手なの男全般と一緒にしないで 僕は僕だ
そうだといいわね
この後の彼が取る行動が、いいんだよ！
最高にいいんだよ！！！
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こんな感じで。
10代、20代、50代の女性が出てくるんだけど。
それぞれみんな、めんどくさいです。
でも、みんなどこかに共感できるところがあって。
かわいくて。
コミカルで。
女性って、かわいいね。
ううん、男性だって。
人間だって、かわいいね。
そんなかわいい生き物が、たまにぶつかったり。
慰め合ったりしながら、励まし合ったりしながら。
あなたなら 絶対に乗り越えらえるわ
今ものすごく つらいことも
やがて 少しマシになる
また つらくなるけどね
厄介な毎日を、なんとか生きていくの。
ただただ、母ちゃん万歳の泣ける話ではなくて。
女性って、いいな。
男性って、いいな。
人間って、いいな。
めんどくさいけども。
人生も、悪くないかもな。
もうちょっと、がんばってみようかな。
って思えるところがすごく、いいの。
素敵なの。
めんどくさいけども。
すごく、めんどくさいけども。
そこを含めて。
女を、男を、人間を、人生を。
愛したいなあ。いとおしいなあ。
