うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『ケーキツアー入門:おいしいケーキ食べ歩きのススメ(2017)』に関する記憶

こんにちは。
今日は、映画の話はひと休みして。
ちょっと書評とか書いてみます。
いっちょまえに。

なになに、どうした?
急に改まって、どうしちゃったの???

いやいや、あのね。
20年来の親友がいるんだけどね。
このほど、本を出版したんですよ。
いやーめでたい!!!

ケーキツアー入門: おいしいケーキ食べ歩きのススメ

ケーキツアー入門: おいしいケーキ食べ歩きのススメ

尚、個人的にこの本は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。

食べログの☆なんて信用ならん!”本当においしい”ケーキ屋さんを知りたい→Yes
②このケーキはおいしいとは思うけれども、どこがすごいのかがわからない→Yes
③ケーキなんて、女子どものものでしょ?と思っている→Yes

その心は…


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お前は今までに食ったケーキの数を覚えているのか。

なんとびっくり。
Nyaoが今までに食べたケーキの数は、3,000個だそうです。
わーお

しかもその3,000個だけどね…

ここで紹介するケーキ店は、すべて私が自腹を切って買って、実際に食べておいしい!と思ったお店しか載せていません。

all自腹です。
わーお

まあ、何年もかけたフィールドワークではあるとはいえ、ね。
3,000個って、なかなかの到達できない数だと思うのよ。

たしかに、インスタやブログをざっと見ても。
週に10~15個のケーキは食べているような印象。
出かけるときは大抵、ケーキ絡みな印象。

そして。
Nyaoのリュックにはいつも、紙皿とプラスチックのカトラリーが常備されています。
いつ、いかなる場所でもケーキを食べられるように。

すばらしい。
ヲタはこうでなくっちゃ!

グルメガイドも、いろいろ見てるとね。
「○○さんのレセプションに行ってきました♪」
みたいな自慢&提灯記事も、けっこう多いの。
そんなの読んでも、おもしろい訳あるかーい!!!


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3,000個て!全部自腹て!!!
極端でしょう。
でもね…

極端な人が書くものは断然、おもしろい。

おもしろい読みものには、もちろん。
文才や構成の妙も、あるに越したことはないけれど*1
どちらかというとそれは、テクニックの話で。

いちばんはやはり、目線や感性だと思う。

メッセージがしっかりあって、目線がユニーク。
そういう人が書くものは、芯がブレないからね。
大体、ベースからがっつりおもしろい。

どんなにケーキが好きだとしても。
3,000個食べられるか?って言ったら、たぶん。
わたしたちは無理でしょう。

モンブランならここ、フルーツ系ならここ、チョコレート系なら、ここ。
今ノリに乗ってるパティシエは、この人。
ここ1年ですっごくおいしくなったお店なら、ここ。
同じミルフィーユでも、あのお店とこのお店の違いは、ここ。

Nyaoは全部、知っています。熟知しています。
本当においしいケーキはぜひ、自分で見つけてくれたらいいし。
この本にもさんざんっぱら、そう書いてある。
自分のお気に入りのケーキが見つかったときの感動とか、懇々と書いてある。

うん、あのね...
3,000個食べないと、見えない世界があると思うの。

おいしいケーキに出会うためのきっかけにするには、十分な文献です。
食べきれないわたしたちは、乗っかってみようよ。


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さて、何のジャンルでもそうなんだけど。
オタクとか、あるいは、知性を売りにしたキャラ設定の人たちの間ってさ…

「批判しないと死ぬ」「マウントできないと死ぬ」病の人が多くないですか。
Twitterなんか毎日うんこ投げ合ってるよー

わたしもね。
カメラやJazz好きの世界で嫌んなるぐらい、遭いました。
さんざん、マンスプレイニングされてきました。

彼らは相手のことをdisることでしか。
自分の立ち位置を保てないんです。
かわいそうに。

誰かに「教えてもらう」なんて、もっての外。
常に自分の立場の方が上じゃないと我慢できないんです。
かわいそうに。

そんなん、広がりもないし、未来もない。
せっかく好きなものがあるのに、その世界で友達一人作れない。
かわいそうな人だなあっていつも思っています。

Nyaoはケーキヲタだけど、そういう類の人間ではなくて。
口の端から泡を飛ばして、ぶわあああああっと語りながら。
自分一人だけが恍惚となるような、知識のひけらかしではなくて。

手抜きのケーキやそれを是とする世の流れに対しては、めいいっぱい怒るけど。
自己満足のためだけに誰かをdisるなんてことは、ない。
絶対に、ない。

たとえば、これ。
Nyaoが提唱している「ケーキツアー」とはなんぞや?って下りなんだけどね

 電車の車窓から見える新鮮な景色を楽しみ、普通だったらまず訪れることがない駅に降り立つことを楽しみ、駅から緑が多い道をテクテク歩くことを楽しむ。そして、お目当てのパティスリーが見つかったときの喜び!
 渋いファサードの店のドアを開け、キラキラと輝くケーキが居並ぶショーケースを覗きこむときの感動!
 無事においしそうなケーキを買って、家に帰るまでのワクワク感!
 家に着いて、ケーキ箱を開ける瞬間の気持ち!
 あるいは、パティスリーに併設された小さなサロンでおいしい紅茶と一緒にできたてのケーキを食べるときの、なんともいえない静謐な時間……。

ほら。どう?
風景が眼前に迫ってくるでしょう。
もう、ケーキを食べたくて食べたくてたまらない身体にさせられたでしょう。

知識だけじゃ、ない。
熱量だけでも、ない。
誰より上とか下とか、ない。
人を動かすのは実は、こういう力だと思うの。


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わたしは、映画を観るときでもね。
あらすじとか、前情報とか。
最低限しか、チェックしないタイプなのね。
何かをたのしむのに、過剰な情報は必要ないって思ってる。

たとえばさ。そうだな…
アウェイなお店で、すっごく高いお料理を食べているときとか。
希少食材をいただいているときとか。
めちゃめちゃビンテージって聞いたワインを飲んでいるときとか。
食べ終わった後に「正直、味わかんなかった…」ってなることない?

それ、情報が入りすぎて、本質をたのしめていない状態だと思うのですよ。
なんと、もったいない。

Nyaoが発信する情報は断じて、ケーキの邪魔をしないの。

たとえば、そうだなー
この本に載っているケーキは、ね。
1つのお店に対して1個、ないしは2個程度です。

いやいやいや!
Nyaoに好きなケーキを語らせたら、こんなもんじゃないよ!!!
好きなお店のケーキが、1個で済む訳がない。

もちろん、紙面の都合とか諸事情もあると思うよ?
でもね、中身スカスカな印象はない。
全然、まったく。
むしろ、お店を絞ってある分、濃ゆくなってる。

で、お店情報を厳選して。
何にフォーカスしているか?っていうとね。
素敵なお店の、あくまでフックとなる部分を重点的に書いてあるのね。

決して、説明しすぎない。
あとは、実際に行ってみて!味わってみて!
という点にすごくすごくものすごーく、気を遣って書いている
ので。

一切、ケーキの邪魔をしません。

実際これを読み終わった後には、ものすごくケーキが食べたくなる。
お店も100も載っている訳じゃないので、ちゃんと憶えきれるし。
「週末どこから攻めよっかな~♪」って、気分になる。
すごく、なる。

邪魔しないどころか。
おいしさの秘密をたくさん知っているので。
おいしさが何倍にも何十倍にも、増幅するんだよね。
たとえば、そうだなー

用賀にリョウラというお店がありまして。
そこのサントノーレを食べたときにわたし、びっっっくりしたの。
あ。サントノーレというのはちっちゃなシューをたくさん組み合わせて作る
こんなケーキです。↓

f:id:pinocorita:20170707012527p:plain

シュークリームなんて、長らくショーケースに入れてあるとさ。
水分を吸って、生地がふにゃっとなるじゃん。
特に、そのときは15時ぐらいだったからね。
当然、そんなもんだと思ってたんだよね。

ここのお店の特に素晴らしいところはね。
タルトでもパイ生地でもシュー皮でも。
何を食べても、いつ食べても。
ちゃんと、土台がサクサクしてるの。

え。これ?何入ってんの???
って、思うじゃん。

火入れのテクニックのなせる業ですってよ奥さん!!!

しっかり、焼く。
焦げるまでいかないギリギリのラインで。
しっかり、焼く。

そうするとね。
水分がきちんと飛んで、ぎゅっと密な土台が出来上がるので。
何を載せても、何を詰めても、びくともしないの。

この、「しっかり焼く」にいかに高い技術が必要なのか。
これができるパティシエがどれだけ貴重なのか。
ということを熱っぽく語れるのが、Nyaoの強みなんだけど。
この本にはこういう類のことが、ね。
いくつもいくつも、書いてあるの。

「なにこれおいしい!すごい!大好き!!!」
って感動が、まずありき。

そこにくっつけて知識を蓄積してきた人なので。
「なにこれおいしい!すごい!大好き!!!」
に、すべての情報は繋がるの。

誰のマウントも、しない。

 パティシエが自己満足に陥らず、お客のためにどれだけ真剣にケーキを作っているのか、買う人のちょっとしたしあわせのためにどれだけ心を砕いているのか、それを評価します。逆に「値段が高すぎる店」や「一般の人の購入が困難な店」は除外しています。
 普通の人が普通に買えるケーキ。せいぜい五百円かそこらのケーキ。でも、そこに愛と技術と魂を込めたケーキ。そんなケーキを作る店を応援したいと思うし、ここに掲載しているのはそんな店ばかりです。

わかりやすくて、ストイック。
胡坐をかいている職人には、厳しく。
精進を怠らない職人と庶民には、深く細やかな愛を。

それが、Nyaoのスタンスなのね。


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そんなニッチな世界のブログなのに。
総アクセスが200万超えって、これもなかなかで。
それはひとえに、Nyaoがこつこつ何年も続けてきた結果なんだけど。
やはりいちばんバズったのは、この記事。

www.nyao.club

熱いでしょ。ふふふ

わたしもデートでレストランを探す*2ときに
食べログ邪魔!ファ●キュー!!!
わたしの行きつけ☆3.3とかまじふざけんな!!!

って、いつも思ってた。

だからね。
これがアップされたとき、胸がすく思いだったよ。
すごく、憶えてる。

バズは、食べログ知名度のせいがないとはいえないけれども。
「わかる!」「それな!」ってなった人も多かったんだと思う。
炎上は、しなかった。


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前にも話したかなー?
わたし、感動の語彙が少ないんだよね。
基本的に「すごい」と「やばい」しかない。
最近はHIP HOPから無理やり「イル」だの「ドープネス」だの引っ張ってきてるけど。
平安時代だったら、なんでもかんでも「いとをかし」だわ。

なので、わたしはね

 そして、私にとって「おいしい」の基準は、「味に説得力があるかどうか」です。甘くすべきものはしっかり甘く、焼くべきものはこんがり焼き、繊細な香りを際立たせたいならば味のバランスを工夫して……と、「なぜその味なのか」という理由がきちんとあるケーキが「おいしいケーキ」だと思います。

「すごいおいしい」を、ここまで丁寧に言語化できない。
すごい … !!!*3

そうそう!
そういう意味での「おいしい」で思い出すことが、一つ。

わたしはもともと、ピスタチオが大好きなんだけどね。
とあるピスタチオのケーキを食べたときに、びっくりしたことがあるのね。

なにこれ、青い香りがものすごい!
だだ茶豆みたい!!!

Nyao曰く。
新鮮で良質なピスタチオでないと、ここまでの甘みと香りがしないのだとか。
そういうピスタチオを確保できること自体がもう、すごいのだとか。
さらに、ピスタチオ自体の甘みも香りを残しながらケーキに使えるというのはもう、舌も腕も相当にハイレベルでないと無理なのだとか。

なるほど。
こういう「おいしい」にありつけるのは本来、奇跡的なことなんだ。

そっか。
飲み屋で出てきて、殻を割るのに爪持ってかれるだけのやつじゃないんだ。
ピスタチオって。
それでも割れなくて、歯で挑んで縦に挟まって…クッ!ってなるだけのやつじゃないんだ。
ピスタチオって。

そっか。
「おいしい」って。
誰かにものすごく、感謝したくなることなんだ。
「おいしい」って。
独り占めしないで、みんなに分け与えたくなることなんだ。

ケーキツアー入門: おいしいケーキ食べ歩きのススメ

ケーキツアー入門: おいしいケーキ食べ歩きのススメ

*1:あ。断っておくけれど、この本も文才も構成の素晴らしさも溢れているのよ?断っておくけれど

*2:食いしんぼだからわたしが探すことの方が多いんだよ。そのかわり「好きなジャンルを訊いておいて3店ぐらいに絞った上で最終選考は相手にゆだねる」手法を取ります。このおかげで『「なんでもいい」って言ったのにプレゼン後にクレーム』とか一切ありません。活用していいよ男子ー!!!

*3:言ってる端から語彙…