うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『シャンドワゾー(2017夏)』に関する記憶 - ケーキを食べたら日本語ラッパー並みに世界に感謝したお話

そんな訳で今回は、ケーキに感動し過ぎておいおい泣いた話を書きます。

この前もお話したけどね。
友人がケーキ本を出版したんです。
こちらにも力一杯、書評を書きましたけども。

pinocorita.hatenadiary.jp

この前、見たらね。
Amazonのレストランガイド(その他)ランキングで5位になってました。
おおおおおー!!!
でも、いい本なのでもっと売れてほしい。
本当においしいケーキを食べたい人のところに、しっかり届け!!!

ケーキツアー入門: おいしいケーキ食べ歩きのススメ

ケーキツアー入門: おいしいケーキ食べ歩きのススメ

さて。
この本を読んだ瞬間から行きたい!と思ってたお店がいくつかあるんだけど。
その中の一つ。
シャンドワゾーが、期間限定で新宿伊勢丹に来ているというので飛んでいきました。

尚、このお話は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。

①ケーキなんて、女子どものものだろ?とまだ思っている→Yes
②ケーキで泣くとか暑さで頭湧いたんじゃないの?とぴのこを心配してくれている→Yes
③唯一無二の存在に憧れている→Yes

その心は...


まずね、連れて帰ってきたラインナップはこんな感じです。
じゃん!↓

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完全に、皿のチョイスを誤ったな...猛省。

気を取り直して、実食ね。
手前から、左回りにいきます。

①タルト・アマンド・パッション

名前の通り、アーモンドとパッションフルーツのタルトです。

実はわたしの舌は、酸味と辛味に打たれ弱いのね。
激辛なんか食べてると、涙と鼻水が止まらないし。
すーぐ、お腹下しちゃう。

でも、旨辛ならイケるんです。
辛い!って刺激だけですべてを覆い尽くすような味じゃなくて。
ちゃんと、まろやかにするようなものが入っていたり。
ちゃんと、旨みまで感じられるようなもの。
それなら、大好きです。

酸味も、そう。
耳下リンパの辺りがすーぐ、きゅいーんとなってしまう。

たとえば、コーヒーのイルガチェフってあるでしょう。
ここ数年でだいぶ流行って、いまやドトールなんだかでも飲めるけど。
あれなんか、最初飲んだとき酸っぱ!ってびっくりしたけど。
丁寧に丁寧に焙煎したものだと、ちゃんとコクも苦みも死なないんだよね。

ちょっと話が逸れたけど。
そういう諸々があって、フルーツのケーキとか少しばかり苦手なんだよね。
ケーキのクリームとか土台とかって、甘いじゃん。
甘いの食べてからフルーツに戻ると、すごく酸っぱいじゃん。

それが苦手だったの。

でもね。上に書いたように。
酸味の刺激ですべてを殺しているからダメなんであって。
腕の良い職人であれば、バランスよく仕上げてくれるんじゃないかってこと。

最近、気づいたんだよね。

なので、これもチャレンジしてみることにしました。
すーごーく、ドキドキしたけど。

さて、いただきましょうか。
断面は、こんな感じ。

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う。パッションフルーツの層が流出してしまいました...。
もっときちんと冷やしておけば、しっかり固形だったはず。ううう
ごめんなさいごめんなさい。

暑い中持って帰ってきたんだから、もうちょっと我慢すればよかったよね。
ケーキ!ケーキ!早く!食べたい!!!
がっつきすぎだよもう...。

パッションフルーツの部分はね。
まあ、酸っぱいは酸っぱいです。
でも、ばちーん!がつーん!と来る酸味ではなくて。
ちゃんと、香りもトロピカルみも感じられる酸っぱさです。

でねでね。
この上に載っている白いドーム型の部分があるでしょう。
ここがね、アーモンドのムースなんです。
ちなみに、パッションフルーツの層に紛れているのも、アーモンド。
周りに刺さっているのも、キャラメリゼしたアーモンドスライス。
トッピングも、アーモンド。
つまり、タルトとパッションフルーツ以外のところはアーモンド尽くしなのね。

で。土台のタルトがおいしいんだこれがまた。
ザクザクで、どっしりしていて、安定感がある。
フランスの焼き菓子に、ガレット・ブルトンヌってあるでしょう。
こんなやつ↓

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これのすごくおいしいやつに似てると思った。
ケーキヲタの人に怒られるかもしれないけど。

パッションフルーツの酸味をね。
杏仁豆腐のような優しくてまあるくて穏やかな甘みで包容して。
土台のタルトでしっかりと受け止める。

構成とバランスが、すーごくいいんだよね。

②タルト・ヴァニーユ・マルティニック

淡い黄色いタルトで、上にトルネーディなチョコ細工が載ってる子です。
タルト・ヴァニーユ・マルティニック。
直訳すると、「バニラのタルト マルタ島風」。

どの辺がマルタ島風?
外見からは、よくわからないよね。

いただいてみましょう。
断面図です。

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あ。これ好きぃ...♥︎

バニラのパートはよくよく注意してみると、3層に分かれているのね。
いちばん下が、ラムレーズンのバニラクリーム。
テクスチャとしては、硬めです。
で、ラムレーズンがね...。
いちじくのコンポートのような、濃厚な甘さなんだよね。

これだけでも十分おいしいんだけど。
1個丸々食べると、くどいかも。重いかも。
ってところに、上のこのバニラムースですよ。

ほわり、と軽い。
甘みも、クリーム部分よりは淡いけどちゃんと甘い。
卵のようなコクもある。

真ん中の黄色いところは、やや濃厚なねっとりしたムースで。
たまご色の部分とはまた、テクスチャと濃さも味も違うのね。
ちゃんと、コントラストがつけてある。

そうそう、マルタ島っていうのはね。
ラムの産地なのでありました。

たしかに、お酒は感じます。
でもこれも、アルコール特有の尖った立ち上がり方ではなくて。
あくまで、レーズンを香りよくするため。
レーズンをふっくらしっとりさせるため。
おいしくするために仕事が施してあるのだなーとわかるんだよね。

これ"も"、シャンドワゾーのスペシャリテで。
夏限定ではないみたい。
ん?「も」とは???...後半に続く!!!

③タルト・シトロン

レモンのタルトですね。
うーん...爽やか!夏だーーー!

さっそく、いただきます。
ほい。断面図。

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黄色い部分は、全部レモンクリームですね。
硬めに炊いたカスタードのようなテクスチャー。

レモンって聞いただけで、唾液が倍増して耳下リンパがきゅいーんと来るわたしです。
ドキドキしたけど、これは大丈夫だった。

レモンの酸味はあるんだけど、ちゃんと角は取ってある感じ。
酸っぱいけど、まあるいの。
レモン自体の香りもいいしね。

上に載っているのは、メレンゲです。
甘ったるい、ねちっとしたメレンゲではないですね。
軽くて、サクサク。
バーナーで炙って、少し焼き色がつけてあるのでいい香り♪

そんな感じで、この中で比較すると。
全体的に軽く感じるんだけど。
これもまた、ザクザクのタルトでどしっと受け止めてくれる感じです。

トッピングに、スライスしたレモンのコンフィが乗っています。
うーん...爽やか!夏だーーー!

④ミゼラブル

ミゼラブルってなんぞ?って思うじゃん。
わたしもう、ジャン・ヴァル・ジャンのあれしか知らないよ。

「ミゼラブル」とは、日本語でいうと「かわいそう」「みすぼらしい」という意味です。では、このケーキの何がかわいそうなのかというと、サンドされているバタークリームの作り方が、通常は牛乳を使ってバタークリームを炊くのに対して、水を使って作るから、貧乏くさいというかかわいそう、ということらしいです。
 
(※『ケーキツアー入門』より引用)

なんだろう、この同情を誘うケーキ...。
さっそく、食べてみましょう。
横からみたお顔、いきます。

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控えめに言って、地味...かな...?
スポンジも心なしか、くすんで見える。

いやいやいや!
こういうものはね、食べてみないとわからないよ!
さっそく、いただきましょう。ぱくり。

あ...これ...

牛さん、ありがとう。
にわとりさん、ありがとう。
小麦さん、ありがとう。
さとうきびさん、ありがとう。
ぶどうの木、ありがとう。
アーモンドの木、ありがとう。
村山シェフ、ありがとう。
おとうさんおかあさん、私を産んでくれてありがとう。

地味とか言って、ごめんなさい。
これねえ、これねえ...

この世の生きとし生けるものすべてに感謝したくなる味なの。

誇張じゃなくて本当に。
食べてる間、涙が止まらなかった。
食べものでここまで感動したのって、いつだろう?
熟成牛を初めて食べたとき以来かな。
つまり、10年遡るほどの経験でした。

バタークリームってね。
わたしは大好きなんだけど。
上手に作らないと、重いし、べたっとする。
くどくなる。しつこくなる。

特に最近は、敬遠されているものではあるんだよね。

このバタークリームはね。
重さはしっかりあるんだよ?
でもねえ、でもねえ...

口の中いっぱいにバターの香りを残したまま、すっと消えてしまうの。
なくなってしまうの。
すごく、儚いの。

気づいたら、あ。もう、いない...

このケーキの肝は、いかにおいしいバタークリームを作るかにかかっています。(中略)例えばミゼラブルをスペシャリテとしているシャンドワゾーでは、フランス・イズニー社の最高級バターを贅沢に使用しています。もちろん、高いバターを使えばそれだけでおいしくなるわけではありませんが、シャンドワゾーの絶品ミゼラブルはイズニーのバターなしでは作りえないものです。
 
(※『ケーキツアー入門』より抜粋引用)

イズニー、お前だったのか!!!

でも、香りだけじゃない。
塩気とコクも、しっかりあります。
そしてまた、アーモンドスポンジの甘さが絶妙なこと。
バターの余韻とともにラムレーズンを味わう時間の、しあわせなこと、しあわせなこと。

こんなケーキを作れるって、一体どういう人なんだ?
気になって、いろいろ調べちゃったよ。
そしたらね。
村山シェフのポリシーがまた、素敵なんだ。

素材感が際立ったお菓子が好きです。例えばレモンのお菓子は酸味があった方がいいし、ガトーショコラはカカオ感がある方が美味しい。一つのお菓子を考える時、主役になる素材を存在感のある主役にする為の、レシピや構成にこだわっています。目をつぶって食べても何のお菓子なのかすぐにわかる、そんなお菓子が私の理想です。
 
(※シャンドワゾー - Chant d'Oiseau -公式サイトより引用)

うんうん、わかる。
これ、目をつぶって食べてもわかる。
すぐ、わかる。
間違えようが、ない。

他では絶対に、味わえない。
唯一無二です。
そっか。スペシャリテってこういうことなんだ...。

伊勢丹マ・パティスリーでの催事は、7/17(火)までです。
お店は川口だけど、わざわざ行く価値があるよ。
ぜひぜひ!

『ケーキツアー入門』には、まだまだ絶品ケーキがたくさん紹介されています。
こちらも、ぜひぜひ!

ケーキツアー入門: おいしいケーキ食べ歩きのススメ

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