うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『メアリと魔女の花(2017)』に関する記憶 - あえてジブリに触れずに語ってみるよ

どうも、あなたのぴのこです。
今回は、こちらのお話。

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「メアリと魔女の花」予告

先週だったかなー?
わたしのTLで、この記事が拡散されまくってまして。

realsound.jp

うん、この記事自体はね。
いいの、いいの。

しっかり、深く、観たんだなっていうのがよく、わかる。
その上で、落胆したんでしょう。
こういう人もいるんだーぐらいの感じで読んだよわたしは。
言葉選びがショッキングなのは、あえての狙いなんだろうしね。

でもねえ、でもねえ…
この記事について。
「そういえば、ポニョのときもこうだったじゃん」
「そういえば、マーニーでも…」
『メアリ~』を観てもいない人がやいやい言ってるのが、すーごく嫌だったんだよね。

ええい!
うるさいうるさいうるさーーーい!!!

もちろん、その人の好みとか個性とか手癖とかはあると思うよ?
でもね、過去の作品から挙げ足取るの、わたしは全然好みじゃない。

何のジャンルでもそうだけど。
リエーターがひとつの作品を仕上げたからと言って。
毎度、100%満足しているとは思えないんだよね。わたしは

作りたいものなんて、そのときどきで変わるじゃん。
まずかった点なんて、本人がいちばん猛省して。
新しいアプローチを試すはずじゃん。

何を隠そう、わたしがジブリ離れしたきっかけは、ポニョなんだもの。

じゃあ、訊くよ?
この作品のキャッチコピーって、なんだっけ。
「魔女、ふたたび。」だよね。

今度は、観た人に訊くよ?
エンドロール終盤で、誰の名前が出てきたっけ。
あの人と、あの人と、あの人がいたよね。

…と、いうことはね。
監督は、スタッフは、ジブリと比較されることなんて。
批判されて、叩かれることなんて。
とーーーっくに、想定済みなんだよ。

なのでわたしは、べつのアプローチをしてみたいと思います。
つまり...ジブリなんて観たことないような顔して、レビューを書いてみる。

はい。前置き長くなりました。
いくよいくよー!
尚、このお話は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。

ポケモンもいいけど、他にも子ども連れで観に行ける映画がないか、探している→Yes
②暑すぎてもう、むずかしいことは考えられない→Yes
③たまに自分の存在意義とか考えてしまって、壮大に凹む→Yes

その心は…

(※尚、劇中の台詞については耳コピであるため、正確ではない可能性が含まれます。ご了承ください)


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主人公のメアリはね。
幼く見えるので、7、8歳って設定なのかな?って思ったら、なんとびっくり!
11歳だそうです。わーお

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とりあえず、まず、ね。

スカートが、短い。

何度か着替えて、そのたびにお洋服も変わるんだけどね。
毎回、スカートは短い。
タイツでもニーハイでも、スカートは短い。
どういうコーディネイトになっても、スカートだけは、必ず短い。

それなのに、おてんばキャラなんだよね…。
がんがん動いて、がんがん転ぶもんだからさ。
そんなにしたら、危ない!ぱんつが!ぱんつが!ぱんつがーーー!!!
って、老婆心がうずうずしちゃうじゃん。

でも、大丈夫。
見えても平気なの、穿いてた。
ちゃんと確認したから、大丈夫。

のっけから幼女のぱんつの話とかなんやねん?
と思うかもしれないけれどもね。

いやいやいやいや…
シャイな君たちが感じていながら発信できないでいることをただ、代弁しただけだからねわたし。
もっと、感謝してくれていいよ。


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さて、このメアリを取り巻く環境なんだけどね。
ちょっとばかり、複雑なのね。

越してきた赤い館村は、ね。
ターシャ・テューダーの絵本みたいな、田園風景が広がる村なの。
観てる側にとっては、今すぐ逃避したいのどかだなーって思うけど。

テレビもゲームも、ない。
友達も、まだいない。
本人曰く、「1週間以内に退屈死しそう」。

メアリのお父さんとお母さんは、外国で仕事をしてるんだよね。
なので、彼らは少し後から来ることになっていて。
メアリだけ、一足先に引っ越してきているの。

見ず知らずの場所で、出会うもの、目にするもの。
ほとんどのものが「はじめまして」なんだけど。
守ってくれる、見知った大人が極端に少ない。という
子どもとしては、かなり特殊な環境
なんだよね。
考えようによっちゃあ、かなり心細い環境。

なんだけど。
この、11歳という年齢と。
メアリのもともとの性格のせいもあって。

やれやれ、元気なお嬢さんだこと
目に入ったものにすぐ飛びつくんだから
 
そこがあの子のいいところでしょうよ

この「心細さ」の表現は、あまりないのね。

数少ない表現の一つが、一度目の冒険からの帰宅シーン。
心配した玄関まで出てきたシャーロットさんが、メアリを抱きしめるシーンがあるんだけどね。

メアリの顔が大叔母様のおっぱいに包まれて、もふ、っとなるのね。

そこで、気づいたの。
なるほど、そうか。

メアリにとっては、シャーロットさんはね。
大叔母であり、年齢的にはおばあちゃんぐらいだけど。
まだ到着していない、母親代わりであるのね。
物語がもっと先に進むと、姉にもなる。同士にもなる。
共謀者とも、戦友とも言えるかも。

しかもメアリはこのもふ、の直後にね。
赤い館のことを初めて「我が家」と呼ぶんだよね。
このもふ、だけでね。
「帰ってきた」という安堵と、メアリが孤独を感じなくて済む背景と。
ぜーんぶ、語っちゃってんの。

おっぱいは、愛。
おっぱいは、母性。
おっぱいは、庇護。
おっぱいは、ホーム…

偉大すぎじゃない?おっぱい

いやいやいやいや…
繰り返しになるけどさ。
シャイな君たちが感じていながら発信できないでいることを、わたしはただ…わたしはただ…


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そんな赤い館村にやってきたメアリは、1つ年上のピーターと出会うんだけどね。
出会い方が、まあ、酷い。

なんだ、人か
サルかと思った
葉っぱだらけの赤毛の子ザル

ごるあああピーターーーー!
レディに何ぬかすあああああ!!!

でもまあ、出会いのシーンで印象最悪というのは、ド定番だよね。
転校生案件でも、よくあるある。

ただこの赤毛っていうのがまた、ね。
彼女にとっては、超コンプレックスな訳ですよ。

あんたも黒猫に生まれて災難ね
不吉だなんて言われてさ…でも、私も一緒
こんな赤毛のちぢれ毛だし
ランチを一緒に食べる友達もいないし
何をやっても失敗ばかりだし
私になんか一生
いいことなんて起こらないんだ、きっと

勝手に同類にされたことこそが、ティブにとっては災難だけどね。
今後の人生を憂うぐらい、髪の毛がでっかい地雷になってるだなんて。
出会ったばかりのピーターには、そんなことは知る由もなく。
ことあるごとに、赤毛ー!子ザルー!とからかうんだけど。

ついに、キレるよね。メアリも

うるさいなー
私だって 好きで赤毛のちぢれ毛な訳じゃないんだから
私だって 変わりたいと思ってるんだから

どうやらこの「変わりたい」が、響いたみたい。
以後、彼は「赤毛」「子ザル」を一切封印するし。
あとからきっちり、ピーター版のアンサーもあるんだ。

みんな、変わりたいと思ってるよね。
そこにはみんな、それぞれの事情があるよね。

うっかり踏んでしまったら、二度としない。
「ごめんなさい」だよ。


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で、そんなメアリがね。
7年に一度しか咲かない魔女の花を見つけたことがきっかけで。
偶然、空飛ぶほうきと魔女の力を手に入れるんだけどね。
諸々誤解もあって、魔法大学と縁ができるのね。

業界じゃあ、メアリのコンプレックスもね。
古今東西魔女たちの憧れの髪色」
「天才だけが持てる髪色」
「選ばれし魔女の髪色」

と、大絶賛なの。

さーあ!
劣等感の塊みたいな11歳の女の子の身に。
突如こんなことが起こったら、どうなるか。
とりあえず…

調子に乗るよねー?

そうですね…今のは40%ぐらいの力ですかね

大丈夫だって!
私、魔女に向いてると思う!

しょうがない。
なんせ、今まで褒められ慣れてないんだから。
これはもう、責められない。

ただ、有頂天になってしまったゆえに彼女はね。
ひとつの嘘をついて。
もっともまずい相手に、もっともやってはいけないことをしてしまうのね。
ここからが、本当の意味での冒険になるんだけど…


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さて、この物語。
すごーく、わかりやすいです。

教科書のような、起承転結。
主人公は、ごくごく普通の女の子で。
ごくごく短い「期間限定」の魔女。

物語がドラマティックになる要素ががっつり詰め込まれている。

盛り上がる要素は、まだまだあるよ。
たとえば、ミッション。
これはとても、シンプルなの。

一緒に帰ろうな
ティブもギブも一緒に

これだけ。
11歳の女の子に世界を救うとか言われても、ちょっとピンと来ないじゃん*1
だから、そこまで大それたものじゃなくて。
「友達と、大好きな猫を助ける」
これなら、手が届きそう。共感できる。

もう無理!っていうピンチはね、3回ほど訪れるの。
自力じゃ、無理。
どうがんばっても、無理。

でもそのたびに、ちゃあんと誰かが助けてくれるの。
それは、あのとき助けた誰かさんだったり。
まったく自覚はないんだけど、なぜかタイミングよく、手を差し伸べてくれる誰かさんだったり*2

あるいは、今持っているもので知恵を絞って。
ようやく、なんとか、乗り越えることができるの。

ヒヤヒヤする。ドキドキする。
でも、ギリギリのところで克服できる。
ここにも、カタルシスの種がごりっと詰め込まれているの。

ベタなんだけどね。


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キャラも魅力的だよ?
わたしは紫おばさんこと、マダム・マンブルチュークが大好き。
魔法大学の校長なんだけどね。

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50〜60代ぐらいかなあ?
よく肥えたおばさんなんだよ。
でもね、すっごく声がきれいなの。
コロコロと、歌うように話す人なの。
怒るとこわいんだけどね。

よく、体型はめちゃめちゃ丸々しいんだけど。
姿勢がよくて、上品で。
ものすごく、きれいな発声をする人がいるでしょう。

きちんと喉を開けた声が、おっきな身体に反響して。
オペラ歌手みたいに、身体を使って話す人っているでしょう。
あんなイメージ。あんな、イメージ。

でもねえ、これねえ…

声を当ててるのは、天海祐希なの。

歳、全然違うじゃん。
体型も、全然違うじゃん。
なのに完全に、ふとっちょのオペラ歌手のイメージなの。

しかもねえ、これねえ...
回想シーンで、若かりし頃のマダムも出てくるんだけどね。
数十年前だもん。
年齢も体型も、当然違うじゃん?

おそろしいことに、天海祐希
しっかり、声も変えてくるの。
回想シーンでマダムが喋るところなんて、一瞬しかないのに

完全に、20〜30代の声にしてある。
完全に、細い人の声にしてある。

プロの仕事を見たよ。。。


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あと、キャラといえば...
冒頭に貼った記事ではね、ゼベディさんの存在をばっさり斬ってるんだよね。

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不可解な人物描写も多い。例えば、誤って花を折ってしまうメアリに、冷たい言葉を言い放つ庭師の老人というのは、一体何のために登場したのだろうか。

おおう、これまた手厳しい...。

じゃあ、わたしのアンサーね。
「夜間飛行について教えてくれる人」ってだけで十分、ゼベディさんには存在価値があると思うの。

だって、あの花の秘密を教えてくれる大人がさ。
シャーロットさんだったら、序盤からネタバレじゃん。
バンクスさんだったら、大叔母様に筒抜けじゃん。
壮大に、物語が破綻するじゃん。

シャーロットさんに伝わらない方法で知る。となると…

すごい…びっくりした
そこにいたの 全然気づかなかった
 
庭師は庭の一部だからな

口が固くて、存在感の薄い人間が必須なんだよ。

まあ、わたしにとってはね。

もっとも猫というものは 誰かのものにはなりゃせんよ
こっちがそう思ってるだけでね

この台詞を吐いてくれただけで。
ゼベディさんは、出てきた意味が大ありなんだ。

いい台詞じゃない?これ
寡黙な庭師がぼそっと口にしてこそ、説得力を持って輝くと思うの。


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正直、劇場でもね。
終演後の反応が、まっぷたつでした。

スタンディングオベーションせんばかりに絶賛している人がいると思えば
「俺、笑いが止まらなかったよ…」
って、にやにやしてる人もいた。

ジブリのパクリと見れば、突っ込むところたくさんあったかもしれない。
でもね。
物語としては、ドラマとしては。
なかなかよくできてる作品だと思えたよ。
わたしは

エンドア大学の構造とか、魔女のお家の室内とか超かわいいよ!
ラスボスの第二形態とか、超かわいいよ!

科学と魔法の融合は あまたの失敗の上に成り立っている
失敗もまた 結果なり

こういう「高度に発達した科学は魔法と見分けがつかない」みたいなのもさ。
べつにまあ、目新しいアレでもないじゃん。

ド定番だよ?
ベッタベタな王道だよ?

でもねえ、でもねえ…

冒険って、ファンタジーって。
こういうものも、あってほしい。
わたしは

ポニョで置いてけぼりにされてから。
わたしはずーっと、こういうのが観たかった。
ジブリが今こういうことやらないんだったら、それはそれでいいよ。
でもね、こういう系譜も残っててほしいの。わたしは


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まだ7月なのに、毎日うだるような暑さでしょう。
だからもう、むずかしいこと考えなくていいよ。
ぼさーっとした頭で、観に行ってみてよ。
そしたらきっと、沁みるから。

ツッコミ入れるの、たのしいよね。
斜めに見るの、気持ちいいよね。

わかるよ、わかる。

でもね。
なーんにも、準備しなくていいよ。
たまには、ノーガードで観てみてよ。

それでうっかり、感動しちゃって。
おやおや?あれれ?
と、涙腺が壊れちゃっても。

いいよ、いいよ。
暑さでヤラれたことにしちゃおうよ。

すばらしい季節 (末盛千枝子ブックス)

すばらしい季節 (末盛千枝子ブックス)

*1:結果的にどうなるか、は置いといて

*2:実は、そういうことが大助かりだったり救われたりするんだ