うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『さよなら歌舞伎町(2015)』に関する記憶 - 極上ジャージに痺れつつ、「夢を持つのは素敵だけれど、"ここではないどこか"に憧れすぎるとしあわせそうに見えないなー」と痛感したお話

どうも、あなたのぴのこです。
今回は、このお話。


映画『さよなら歌舞伎町』予告編

尚、この作品は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。

①自分が本来いるべき場所はここではないと思っている→Yes
②天使みたいな女の子なんて会ったことがない→Yes
③怒りのぶつけ方が下手で、悩んでいる→Yes

その心は…

(※尚、台詞については耳コピであるため、正確ではない可能性が含まれます。ご了承ください)


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これ、ポスターなんかだと、ね。
「主演:前田敦子&染谷将太(※ばばーん!!!」

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みたいな感じになってたけども。
実際に観てみると。

主役は、4組のカップル全員なんだよね。

彼らに付随することが、同時進行で展開していって。
主に歌舞伎町のラブホテルを舞台にして。

おおう、おおう!
これは…

ラブホだけに、グランドホテル方式 … !!! (※無駄に武者震い

わたし、前々回ね。
「起伏がなくて台詞がよくて登場人物が少ない作品が好き」
って言ったけど。

撤回します*1

アンサンブルプレイも好きー
大好きー

そうそう。
アンサンブルプレイのいいところって、いろいろあるけど。

「全員、主役」
ってところも大きいと思うの。

わたしは、1つのお話を観ていてもね。
主人公よりも、脇役が気になっちゃうことの方が多くって。
そういえば、あの子って、あの後どうなったのかなー?
って、観終わった後も気になっちゃうことが多いのです。

終演後に勝手に、彼らのスピンオフを想像したり。
妄想暴走族なので、それはそれでたのしいのだけれども。
こういう形式でちゃんと、彼らのこともたっぷり見せてもらえると。

すーーーごく、しあわせになれるんだよねー

だからこれ、公開時に
「意外とあっちゃんの出番が少なかった」
って感想もあったみたいだけど。
そらそうだよ。
主役が8人もいるんだから!

で、中でもヘナ役がまじ天使だったのね*2

べつに、あっちゃんも悪くはないんだけど。
悪くはないんだけど……正直、良くもない。

だって、主役級の8人のメンツってね。
鼻水をアップで撮られることも厭わない染谷将太とか。
ばんばん脱いで、がっつり熱演するイ・ウナとか。
松重豊にがっつり尻を揉まれる南果歩とか。
そういうところと共演するので。

やっぱりこう……
できることに限りがあるのかなー
という、事務所事情はうっすら感じたかな。うん


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とはいえ、わたしがこれを観ようと思ったきっかけは。
前回観た、同監督作の『彼女の人生は間違いじゃない』がやたらと良かったのと。

pinocorita.hatenadiary.jp

染谷将太が出ているからです。

わたしはね。
「死んだ目」が上手い役者に、とにかく弱いのだよ。
しかも、なんだよ彼は。
あんな生気の無い目なのに、さ。

まつ毛、ふぁっさ~じゃん。
そんなん、気になっちゃって見ちゃうじゃん。
絶対、見ちゃうじゃん。

その他、死んだ目以外にはね。

・もっさい髪型
・ぼそぼそ喋る
・猫背
・ジャージ

などといった属性も、ぴのこを撃ちます。撃ち抜きます。
なのでまったく同じ理由で、池松壮亮も好き。
そんなわたしにとってこの徹役はほんと、ご褒美みたいなもので。


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さて。
そんなわたしの性癖なんぞは、憶えなくていいです。
テストに出ないので。
映画の話しよ!映画の話。

それでね、この映画。
さっきもちょっと書いたけど。
コリアンデリヘル嬢のヘナがおっそろしく、いいのね。

恋人に作ってもらったハンバーグを泣きながら食べるシーンとかもう!もう!
最高にいいよ!

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うん、やっぱりおいしい
チョンスの作ったハンバーグはおいしい
食べる?
 
いっぱい食えよ
 
おいしい
とてもおいしくて……すごくおいしい
ほんとにおいしい
ごめん

この怒涛の「おいしい」。
これよ、これ!
特に、後半の「語彙ーーー!!!」ってなる辺りのエモさたるや!

胸がいっぱいになると、言葉って追いつかなくなるじゃん。
わかる……わかるよこれ


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『彼女の人生は間違いじゃない』を観たときも思ったんだけどね。
廣木作品って、説明的すぎる長台詞がときどき気になるけど。
それを補って、余りあるぐらい。
セックスに乗せた感情表現が巧みだよね。

たしかに肌色割合多めだけど。
どの裸もどのセックスも、とっても情緒があるの。
今回もその手腕を、遺憾なく発揮してた。

ヘナが出てくるところで好きなシーンは、たくさんあるんだけど。
わたしがいちばん好きなのは、ヘナが体を洗ってもらうシーンかな。
あそこの見せ方、すごかった。

部屋に入った瞬間、「明かりつけんな」「目隠ししろ」って。
どんだけ危険な客なのかなって思っちゃうでしょう。
最終日のここへ来て、もしかして殺されちゃうの?
そんなのやだあああーーー!!!

ってところまで覚悟したよ、正直わたしは*3

そこへ来て、これだもの。

洗って
洗って
私の体 きれいにして
落ちないかもしれないけど
洗って

ああ。字面だけでは表しきれない、この、ああ……
そしてこの後のシーンが、さらにいいんだ。
そこは見てのおたのしみね。


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ヘナはこのシーン以外でも。
天使っぷりをいろんなところで発揮しているんだよね。
この短時間で、がっつりわたしが魅了されたぐらいだもの。
それゆえ、どっぷりハマるお客さんも、もちろんいる、いる。

女の子にプレゼントするの、初めてなんだよ
どんなものが喜ぶのかなって考えながら
店員といろんな話して
なんかそれだけで楽しかった
心が弾んだ
 
だからもらってよ
俺の最後のお願い

こういう、嬢に本気で恋してしまうお客さんについてもね。
愚かに見えるような描き方はしていないの。
ヘナ本人も、ね。
このお客のことをバカにしたり、足蹴にしたりはしていないの。

お客から見えるところでも、見えないところでも。

夜に働く人ってね。
「大金に目がくらみすぎて、人として大事なものが欠落している人」
っていうパブリックイメージが強すぎるように感じる。

たとえば、お客からのプレゼントをもらった直後に売るとか捨てるとか。
自分にハマっている客の悪口を言うとか。
映画だけでなく、小説でも漫画でも。
そういう表現、何回も見た。

廣木監督の作品には、あまりそういう人が出てこなくて。
そこも好きな理由の一つ。
性悪な人、冷たい人を長時間見続けるのは、なかなか心に負荷がかかるからね。

鈴木×池沢ペアも、そうなんだけど。
あまり陽の当たる場所に出てこられない人とか。
ひっそり息をひそめて暮らしているような人たちに対して、ね。
監督が向ける視線が、あったかあいんだ。

そこが、好き。優しくて。


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天使は、他にも出てくるよ。
ちょっと、浅野にいおの漫画に出てきそうな感じの、家出少女。

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で、夜中帰ってね、お母さんに言われたの
「お願いだから死んでくれる?」って
 
「ああ、無理だーもう無理だー」って
我慢ってね、一定量越えると全然できなくなっちゃうんだね
すぐ荷物まとめて家出たよ
あたしはね、「死ね」って言われたから死なないの
割り切りでも何でもやって、絶対生き抜いてやるんだから

わかる、わかる。
我慢は限界超えるともう、1ミリも無理になる。
すごく、わかる。

先払い?
 
いいよ、飯代ホテル代って約束だったじゃん
 
それセックス無しの場合でしょ
 
あんた、もしかしていい人?
普通みんな、当たり前みたくエッチしてこようとするよ?
この前なんかね、牛丼一杯でしてこようとすんの
どんだけって感じじゃない?
 
クソみたいな奴ばっかだな
 
ね、クソみたいな奴ばっか

しないの?
 
しないよ
 
でも、何か当たってるんだけど
 
心と体は別もんなの
 
あたしね、好きな人としたことないんだ
初めてもハゲオヤジとだったし
 
そっか
 
……したい

女の子からの「したい」って、大体エモいですけれども。
これまた、うわーかわいいーうわーうわー(※興奮

ホテルの部屋中に干したカラフルな洗濯物とか。
山盛りのナゲットとか。
この陽子×正也ペアは、なんというか......
夢の国っぽいんだよね。かわいい


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さて、そんな中。
このラブホテルの雇われ店長を演じる徹なんだけどね。

なんで俺がこんな汚ねえ所で
みみっちくカップラーメンなんか喰ってなきゃいけねーんだよ
ねえキムくん
俺はね、ここにいる人間じゃないんだよ

徹のこの「俺はここにいるような人間じゃないだ」っていう台詞。
何度も何度も何度も、出てくる。
いろんな人に、言ってるんだ。
ことあるごとに、言ってるんだ。

でも、繰り返すほどに、痛々しいんだ。

随分昔、わたしも歌舞伎町で働いていたことがあって。
風俗とか水商売とか、そういう職種ではなかったんだけど。
こういう人って、すーごくたくさん見た。会った。
実際、いなくなる人も、それから出戻る人も。
たくさんたくさん、見た。
でもね……

「今」じゃないべつの場所に、囚われてないでよ。
「今」の自分も、認めてあげてよ。
「今」いる場所も、愛してよ。

明日事故にでも遭って、うっかり死んだらどうするの。
「俺の人生こんなはずじゃなかったのになー」
のままで終わるよ。

自分をそんな、かわいそうな人にしないでよ。


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で。そんな思いをこじらせながら日々働いている徹なんだけど。
うっかり、彼女の沙耶と鉢合わせしちゃうんだよね。
こんな場所で。

ねえ、なんで怒んないの?
ねえ、いいの?
私、ほんとにやっちゃうよ?
それでもいいの?

いやいやいやいや……

な に 開 き 直 っ て ん だ よ ! ! !

開き直って、問題をすり替えて。
さらに、逆ギレ。

なんでこんなところで働いてんの?
お台場じゃなかったの?
私をずっと騙してたのね 

わたしはケンカのときにこうなる人のこと、本当に苦手です。
めんどくさいなーはいはい終わり終わりー
ってなる。
すぅーっと、一気に醒めるんだ。びっくりするぐらい

「なんで怒んないの?」って言ってるけどさ。
怒ったら怒ったで
「私だってやりたくてやってる訳じゃない!」
ってキレるでしょう。
何が正解か、わかんないもの……。

でも、これだと話終わっちゃうから。
沙耶の気持ちも、ちょっとは想像してみよっか。

後ろめたさ、あるよね。
不安や恐怖も、あるよね。
後悔しないか?という迷い。
さらに、まさにその現場を彼氏に見られたことによるパニック。

そういうことが全部ごちゃ混ぜになってこういう結果になるんだろうね。

こういうのことは人すごく、嫌いだけど。
賢い行動とは思えないけれど。
それを起こすに至った「感情」の部分はまあ、理解はできる。

すべての言動には、理由があるものね。


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とまあ、こういうのがね。
深刻なシーンにこそ、長閑な音楽が当ててあるところとか。
とても、いい。

ラストシーンでちょっとだけ映り込む、徹の大あくびも。
すごく、いい。

たった1日で、いろいろあったよね。
ありすぎだよね。

お疲れ、お疲れ。
逃げな、逃げな。
ゆっくり、おやすみ。

ゆっくり休んで、元気になったら。
また、考えよ。

人生はめんどくさいけど、いとおしいよ。
ジャージの君も、素敵だよ。

*1:お前、ハイローのときもたしかそう言ってたよな!

*2:これについては、がっつり後述します

*3:さすが妄想暴走族