どうも、あなたのぴのこです。
そんな訳で今回は、この映画。
ほんとはこれ、劇場で観たかったんだけど。
機を逃してしまっていたので、今さら初見です。
尚、この作品は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。
①今までの人生、なかなかに悲惨な目に遭っている/遭っていた→Yes
②「自分のことを歌ってるんじゃないか」ってぐらいの音楽に、事故みたいに偶然出逢ったことがある→Yes
③路上で演奏していたら、警察がやって来たことがある→Yes
その心は…
(※劇中の台詞については、いささか心許ない記憶に頼ったものであるため、正確ではない可能性が含まれます。ご了承ください)
- アーティスト: Stevie Wonder
- 出版社/メーカー: Motown
- 発売日: 1990/10/25
- メディア: CD
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これね、ファーストシーンはね。
若干、退屈な話のように見えるんだよね。
あるライヴのシーンから始まるんだけど。
なんというか、こう…
美人だけど、華がないし。(※あくまで、役の上で
歌も声もルックスも、あまり印象に残らない。
「ゲストを ! 」って呼び込んでいる側にも、華がないし。
急遽駆り出されてステージに上げられた側も、嫌々な感じで。
実際、客も全然聴いていない。
ライヴ独特の高揚感も、全然ない。
「都会でひとりぼっちのあなたへ」と歌い始めるんだけどね。
ずいぶん、陰気な曲歌ってるなーってぐらい。
気がつけば 地下鉄にいた
自分の世界は カバンひとつ
ふと 名案に思えた
これで 人生おしまい
そんな気がした
線路の向こうから 迫る列車
痛みは吹き飛び すべて真っ暗
覚悟はあるの?
最後の1歩よ
後戻りはできない
ね。暗いでしょ。ね。
ヒロイン:グレタ(というか、キーラの)の下三白眼気味な表情が、また。
余計暗いイメージに拍車を駆けるんだ。
うーん…どうしようこれ。
観るのやめよっかなーって、一瞬思いかけたよね。
洗濯もの畳みながら。
でもねえ、でもねえ
実はこのシーン、15分後にもう1回出てくるの。
もう1回出てくるんだけど。
最初に観たときの印象と全っ然、違うの。
ここが、すごい。
ぞぞぞぞぞ、ってなる。
わくわくとか、どきどきとか。
それまで封印されていたようなものが、ばばばばば!
って一気に噴き出してくるの。
そこからの物語の動き方がね。
ドライヴ感がすごいんだよ。
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実は、ダンはね。
ついさっきまで地下鉄に飛び込もうと思ってたぐらい、悲惨な状況で。
たまたま入ったライヴハウスで、グレタの歌に出逢ったんだよね。
ほんと事故みたいに、偶然に。
「さっきも酔ってた?」
「だから魔法が起きた
聞こえるんだ
酔ってるとアレンジが聞こえる」
酒で、よかった !
Netflixオリジナルなら、とっくにドラッグになっているところだった !!!
すごいよなー
作曲とかアレンジできる人って。
世界があんな風に見えるんだ ... !!!
グレタの方だって、なかなかだよね。
出張から帰ってきた彼氏が「新曲だよ」って聴かせた曲なんて。
なんで平手打ちしたのか、しばらくわかんなかったもん...。
わたしなんか、ぼさーっとした人間だからね。
ほうほう、またラヴソング作ったのねーお熱いねー
ぐらいにしか、思ってなかったよ。
ちょっと聴いただけで、何があったのか気づいちゃうとか。
どんな超能力だよ。
どんなスーパー彼女だよ。こわい
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そんなこんなでね。
家を飛び出して、気分転換のために訪れたNYで。
あれよあれよという間に、アルバムを作る話になるのね。
「曲ごとに違う場所で NY中で夏の間に録る
美しくイカれたこのNYを称えるアルバムになる」
「ロウワー・イーストサイドの橋の下とか?」
「エンパイア・ステートとか」
「セントラルパークでも」
「中華街やNY大聖堂、地下鉄にハーレム...」
「雨が降り始めたら?」
「当然 録り続ける」
「警察は?」
「関係ない 録り続ける」
ダンはこのアイディアを思いついたってだけで、もう。
「使命を全うした」と言ってもいいぐらい。
ほんっとに手作りの環境なんだよ。
ポップガード(※こんなやつ↓
なんてね...
針金を輪っかにしたものにストッキング巻いて、事足らせてるからね。
でも、そんなふうにして作られたこのアルバムがね…
心から、素敵なの。
夢のように、素敵なの。
もちろん、グレタのスモーキーな歌声も、素敵。
いつも少しだけアンニュイな楽曲も、素敵。
でもね…それだけじゃなくて。
すべて一発録りだからね。
地下鉄の音も、パトカーのサイレンも。
「警察呼ぶぞ ! 」って人の声も。
全部全部、入っちゃうのね。
でもそんなの、全然騒音じゃないの。
むしろ、アルバムのテーマにぴったりなNYの街の風景なの。
思いつきで、いろんな人を仲間に引っ張り込んでみたり。
こうしたら、おもしろいんじゃない?
って、即興的にいろんなことを試してみて。
そのたびに。
ばちこーん ! って、すごい化学反応が起こるの。
「好きな時に入れ
焦らず ムリせずに」
「入らないかも」
「好きにしていい
何でも大丈夫だ」
セッションのいちばんたのしいところ、素敵なところが
これでもか!これでもかーーー !!! ってぐらい、飛び出してきて。
涙と鼻水と鳥肌が止まらなかったよ。
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グレタもダンも、それぞれめいいっぱい悲惨な状況にいるんだけどね。
聞いてて、アイタタタ…ってなるんだけど。
それぞれに、すごく心配してくれる存在がいたり。
損得勘定抜きの手放しで味方になってくれる人がちゃあんと、現れるのね。
「ベースとドラムが要る」
「ギャラはナシ」
「俺が払う
彼のためなら...トーゼンだ」
「お金を使いすぎてるから家に帰らなきゃ」
「だからこそだよ
行こう ほら バッグを持って
1人にしたらオーブンに頭突っ込むだろ」
これがね。
後ろ向きになっていて、はじめの一歩が踏み出せない人間にとってはやや強引なぐらいで。
かなりの力で腕をつかんで、引き上げようとしてくれていて。
気づいたときにはちゃんと、状況が動いてるの。
運命変わっちゃってんの。
これが、すごい。
ほんと、すごい。
結局、最後は人なんだな…
って、希望を抱くのに足る状況証拠なの。
「サムい発言していい?
死ぬほど愛してた」
「サムくない いい歌詞になる
まるで歌詞だ 今すぐ曲を作れ」
すごいね、人生って。
どんなに悲惨な目に遭っても、その気になればちゃんと糧にできるんだ。
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…というように、ほんとにこれ。
あらゆるところに、音楽に対する愛と希望がちりばめられている映画なんだよね。
あ。いいな。
音楽って、素敵だな。気持ちいいな。
って、随所で感じる。
そんなシーンの一つにね。
グレタとダンが、イヤフォンを分け合って。
同じ音楽を聴きながら、NYの街に繰り出すシーンがあるんだけど。
「リストは見せないわ
恥ずかしい曲も入ってるもの」
「俺もそうだ
プレイリストで性格が分かる
見せ合う?」
「いいわ じゃあ見せ合う」
これわかる。ほんとに、そう。
わたしも、シブガがき隊ベストとか入ってるもん...。
プレイリストを公開するのって、裸になるにも等しいんだ。
それでもここのシーンのすごいところは、ね。
全然、ミュージカルじゃないのにね。
同じぐらいの高揚感があるの。
音楽の魔法だ
平凡な風景が意味のあるものに変わる
陳腐でつまらない景色が
美しく光り輝く真珠になる
ここも、わかる。ほんとに、そう。
全然、違って見えるんだ。
見慣れた風景も、お気に入りのBGMがつくだけで映画のセットに早変わり。
知らないおじさんも、ただの通行人も、立派なキャスト。
急に色づいてくる。キラキラして見える。
いいなあ。いいなあ。
人生って世界って、すばらしいなあ。
っていう、どこまでも伸びていきそうな夜。
終わってしまうのがもったいない夜。
こんな夜のために、わたしたちは日々生きているのかも。
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あとはそうだなあ…
グレタの欲のなさにも、感服したかな。
だって、元彼が自分が作った曲を歌ってヒットさせてたら。
「おいこら印税半分よこせや」
ってなるでしょう。
だいぶ、揉めるでしょう。
え。ならない?わたしはなります。
お金ほしいもん。もっと、ほしいもん。
作ったアルバムをあの値段にしちゃうのも、びっくり。
でも彼女は、すごくさっぱりした顔してるよね。
ああ。抜けたな。
彼女はもう、悲惨なところにはいないな。
この先には、明るい未来が待ってるな。
問題があっても、彼女なら乗り越えていけるな。
って、確信できるような表情だもんね。
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グレタとダンが、簡単にくっつかないところも、すごくいい。
プレイリストを共有し合ったあとなんてさ...
絶対にキスすると思ったもんわたし。
ゲスいね。ああ。ゲスい。
あるいは、アルバムが完成したあと。
あんなにたっぷり、8秒*1も見つめ合っておきながら。
え。ここでもキスしないの???
って、思ったもんわたし。
ゲスいね。ああ。ゲスい。
でも、そういう、人の関係の多様性をね。
音楽の懐の深さに掛けて、ちゃあんと描かれているところも。
この映画の素敵なところなんだ。
恋人とか、夫婦とか。
ちゃんとした名前がついていない関係でも。
その瞬間には、心を通わせることができるんだ。
都会でひとりぼっちでも、大丈夫。
真っ当に生きてれば、そんな瞬間もあるんだ。
大丈夫。
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さて、この映画。
来月から新宿ピカデリーで開催される、爆音映画祭に登場します。
爆音ってね。
単に音がバカでっかいとか、うるさいとかいうんじゃないんだよ。
ライブ用の音響システムを用いて大音響の中で映画を視聴する同企画。
各作品に適した音響調整は樋口泰人(boid)が担当し、作品やシーンに合わせて音量・音圧を調整する。
同イベントが新宿ピカデリーで行なわれるのは今回が初。
ね。ほら。
いい音で観たい。
おうちじゃ体験できないような、いい音で観たい。
そんな作品ばかりでしょう。
わたしは、行くよ。
何度か、行くよ。
いい音はね。
大きな音で聞いても。
全然、うるさくないんだよ。
ねえねえ、行こうよ。
あなたも、行こうよ。
目から、耳から、お腹の底から。
気持ちよくなりに行こうよ。ね。
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*1:数えたの?え???