うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『パッドマン』に関する記憶 - じめじめした場所で長らく蓋されていたものを、インドのヒーロー(※羽根つき)が粉砕!圧縮!包装!殺菌!と、ブッパするお話

おひさしぶり!
どうも、ぴのこです。

そんな訳で今回は、この映画。

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映画『パッドマン 5億人の女性を救った男』予告(12月7日公開)

参考までに、過去のインド映画ではこんなエントリを書いてます。
よかったら、ぜひ。

pinocorita.hatenadiary.jp

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尚、この作品は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。

①生理中の女性はしんどそうだから優しくしてあげたいけど、どう触れたらよいのかわからない/生理のしんどさや煩わしさを理解してほしいけど、面と向かっては話しにくいし、はずかしい→Yes
②英語のスピーキングには、まるで自信がない→Yes
③インド映画っておもしろいけど、やたら長いし、題材が古いイメージがある→ Yes

詳細は、このあとすぐ!↓

The Pad Man Song

The Pad Man Song


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・病気でもあるまいし、生理休暇は甘え
・生理用品なんて贅沢品、災害時は自重しろ
・経血の量や出るタイミングは、自分でコントロールできる
・体を温めれば、生理は軽くなる
・女は性欲が高まると、生理が来る

... ...
のっけから過激で、引きましたか。

でも、驚くなかれ。
これぜーんぶ。
ここ最近、わたしがTwitterのTLで見かけた誤解です。うへえ

2019年の日本ですら、この状況ですよ?
このお話は、2001年のインドを舞台にしているのだけれども。
主人公のラクシュミは、貧困層の村出身なのね。
生理の女性に対する「穢れ」「障り」感は、さらに強いの。

まずね。
生理中の女性は、他の人と同じ部屋で過ごすことができません。
廊下のようなところに出されて、5日間部屋の中に入ることができないのね。
出かけることも、仕事や学校に行くことも、できません。

しかもね。
当時、インドでの生理用品の使用率なんて、12%程度です。
貧困層の多くの女性は、生理用品を使うことができないの。
それぐらい、高価なのね。

じゃあ、経血の対応はどうしてるのか?というと。
雑巾にもしないような布や、灰を使ったりしているの。
お世辞にも、衛生的とは言えないよね。

なので、それが原因で不妊になったり、病気になったり。
命を落とす人も、いまだにたくさんいるのだとか。

結婚後、妻を通じて初めて女性のそんな状況を知り。
いやいや、おかしいだろ。
妻も妹も、全女性はもっと体を大切にしてくれよ。

と、立ち上がったのが、我らがパッドマンな訳です。
いえい


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さて。
その「高級品」とされている生理用品の値段ですけれども。
じゃあ実際、どんだけすんの?
って、気になるよね。

2001年にもらったチェンナイの中華ファーストフード店「ヌードル・キング」のチラシでは、「野菜焼きそば」が23ルピー、「チキン焼きそば」が32ルピー、そしてソフトドリンクやコーヒーが1杯5ルピーとなっている。
55ルピーあれば、菜食主義者なら2人がドリンク付きの焼きそばを食べられる、という計算だ。
「ナプキン55ルピー」はドリンク代の11倍の値段なので、今の日本に当てはめてみると、マックのドリンク類が1杯100円としてその11倍、「ナプキン1100円」ということになる。
 
(※『パッドマン』公式サイトより抜粋引用)

ひえー...日本の3倍ぐらいだね。

でね、でね。
「無理無理無理無理...こんな高いもの使ったら、お義母に怒られる!今すぐ返してきて!」
と、妻:ガヤトリに言われたラクシュミは、どうするか。

作るんです。

愛する妻の体を守るナプキンを。
彼女が安心して使える安価なナプキンを。

自作するんです。


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ラクシュミの信念や行動は、周囲にまったく浸透しないどころか。
そもそも、理解されません。

女が生理に興味を持つなんて、とんでもない。
いやらしい。汚らわしい。変態!
頭おかしくなったんか!

ってね。

物語の中でもね。
「どうして男のあなたが、女の脚の間の事情に関わろうとするの?」
と、妻が責めるシーンがあります。
とにかく、この"恥の壁"がものっすごいの。

この村の発展度としては、ね。
風習や伝統から外れるラクシュミに対して。
「おぞましい...悪霊の仕業だ!」
菩提樹に逆さ吊りにして、悪霊が出て行くまで棒で叩け!」

と、村の寄合で決議されるほどの状況なんだけど。

いつの時代だよ???

...ん?でも、いやいやいや。
よくよく考えてみれば。

悪霊のせいにされないだけで。
菩提樹に逆さに吊られなくたって。
心理的な"恥の壁"なら、わたし達の身の周りでも、十分にあるよね。

生理について、オープンに語れない。
なんのことはない。

わたしたちだって、一緒じゃないの。


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特に、妻のガヤトリはね。
典型的 THE・古風な女です。
そりゃあもう、典型的なぐらい。

なので、夫に対しての愛は十分にあるし。
彼の気持ちにも応えたいとは思うものの。

ガヤトリにはガヤトリの、女社会があります。
村社会があります。
波風立てず、目立たぬように。
その中で生き抜くことが、彼女の幸せの一つの形でもあるのね。

なもんで、こんな夫の妻ともなると。
「嫁が悪い」
「結婚したせいで、あいつは変わった」

と、言われがちなのね。

夫が、周囲から見れば奇異に思える行動を繰り返すたびに。
どんどんどんどん、ガヤトリの評判も悪くなる。
どんどんどんどん、孤立してしまう。

「余計なことしないで!わたしの立場も考えてよ!」
となってしまうガヤトリ側の気持ちもね...

これも、わかる。
姑から、舅から。
兄弟姉妹から、親戚から。
知り合いから、見知らぬ人から。

あの家の出来損ないの嫁は... あそこのクズ旦那は...
あのバカ娘は...あの放蕩息子は...

ええい!
うるさいうるさいうるさいうるさーい...!!!

なんのことはない。

わたしたちだって、一緒じゃないの。


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耐えきれず、ガヤトリはこう口にします。

女にとって、恥は何よりも辛い
恥ずかしい思いをするぐらいなら、病気になった方がましよ

恥>自分の健康だと。
はっきりと、表現します。

ガヤトリは実家に連れ戻され、家族は家から出ていき。
ラクシュミもついに、村を出ます。

妻への深い愛も、"恥の壁"に負けてしまうのか。
ううう...

妻の恥を尊敬に変える
俺は必ず戻るぞ
そのために、やるべきことをやる

やだかっこいい...パッドマン...


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村を出たラクシュミはね。
「やるべきこと」を着々とやり続け。
徐々に、理解者を得ます。

はい。みなさん!
長らく、お待たせいたしましたー。

もう一人のヒロイン、パリーちゃんの登場です!

パリーは、工科大教授の父親に男手ひとつで育てられ。
自らもMBAを取得している、富裕層の都会っ子です。
ものの考え方も服装も、実にモダァン。

野菜だけでなく、お肉もお魚もなんでも食べる。
チキンはことさら、大好き。
父親が作った煮込みを、キッチンにあぐらスタイルで手で食べちゃって。
「なにこれ!?クソうまい!」
とか言っちゃうの。最高!

いろいろと、ガヤトリとは対照的なんだけどね。
強くて、賢くて、粋で、切ない。
パリーちゃん、今回のわたしの鬼推しです。
クッソいい女だから、見てって見てって!


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とまあ、このように。
見どころは山盛り、てんこ盛りですが。

クライマックスの一つが、NYの国連に招かれた演説シーンです。

ひっどい英語なんだよ?

発音もめちゃくちゃだし、ほぼ単語の羅列だし。
その単語すらも、パッと出てこなくて。
オーディエンスに教えてもらうぐらい。

でもね、でもね...

女性の自立について。
貧困層の教育について。
富とは?お金とは?
企業の社会貢献とは?

がっつり、語ります。
こんな世の中にしたい!と自分の夢も、語ります。

この熱量が、すごいの。
拙い英語を補って、余りあるほど。
めちゃめちゃ、パワフル。
めちゃめちゃ、魅力的。

この"リイングリッシュ"の雰囲気が伝わるように。
もちろん、役者の演技もすごいんだけど。

翻訳者も、いい仕事をされています。

意味だけでなく、ニュアンスも伝わるように。
工夫が、すごい。
そこも見どころなので、ぜひ。


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こんな感じでね。
シリアスで、現代的な問題を扱っているのに。

しっかり、歌います。
なんだかんだと、歌います。

ちなみにインドのヒーローは、テーマソングもこんな感じ。
妙に、中毒性あるんだこれが


Padman Title Song - Lyrical Video With English Translation - Padman.

スッパレヒ−ロ スッパレヒ−ロ スッパレヒ−ロ ハイハイハイハイ…

そして、がっつり、踊ります。
お花を撒き散らし、うつくしい衣装を翻して。
やれ結婚式だ、成人式だ。
なんだかんだと、舞い踊ります。

おいしそうなカレー?サフランライス?
ド甘そうなお祭り菓子?
出ます出ます。もちろん、出します。

数多の神様?
出ます出ます。もちろん、出します。
サルの神様、肌が青い神様...そらあもう、大盤振る舞いよ。

インドですから。

娯楽としても、みっちり見せてくれる。
さすが、国民10億。
さすが、ボリウッド
奥深いわあ、懐深いわあ。

インドですから。


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カップルで観ても、全然恥ずかしくないよ。
気まずくも、ならないよ。

ちゃんと、笑えます。
しっかり、泣けます。
でも観た後、考えてしまうような。
誰かに優しくしたくなるような...

そんな作品。
137分が、あっという間です。

踊りながら、生理の話をしたことなんて、ないでしょう。
歌いながら、二極化問題を考えたことなんて、ないでしょう。

全然、恥ずかしくなんてないよ。
気まずくも、ならないよ。

パッドマンがきっと、軽くて自由な妖精(=パリー)の羽を授けてくれるから。

生理ちゃん

生理ちゃん