うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『第三夫人と髪飾り』に関する記憶 - 大奥とは真逆のハーレムワールドを覗いてみたら、ひいじいちゃんひいばあちゃんらの気持ちにもがっつり共感した上に、自由の意味まで考えさせられたお話

どうも、あなたのぴのこです。

そんな訳で、今回はこのお話。

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『第三夫人と髪飾り』予告編

尚、この作品は以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。

①一人の男を巡って女が三人集りゃそりゃあ、恨みつらみ妬み嫉み僻みが凄まじかろう...と思っている→Yes
②水彩画や水墨画のような、淡くてうつくしい画が好き→Yes
③男に生まれて、女に生まれて、第三第四の性に生まれて、今のご時世行きづらいなあと思っている→Yes

詳しくは...


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はて。ベトナム映画って、いつぶりだっけ???
と思って、振り返ってみたら。
なんと、びっくり。

青いパパイヤの香り (1993)』

ぶりでしたー。
20年以上、経ってるよ...なにそれこわい

音楽も、そうなんだけど。
個人的に、今ね、
アジアの作品は、「がっつり気になるゾーン」にガンガン入っているので。
今後は20年なんて、悠長なこと言ってないで。
ガンガン観ていきたいと思います。押忍


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お話としてはね。

14歳で、大地主の第三夫人に迎えられたメイの視点から。
家父長制時代のベトナムを描いた作品なんだけれども。
監督の曾祖母の実体験を基にしているのだとか。

オープニングの、手漕ぎの船で嫁入りに来るシーンから始まって。
びっくりするほど、画がきれい。

ハレの日の衣装が、きれい。
結婚式が、きれい。

初夜の儀が、とてもきれい。

淡色が、きれい。
水が、きれい。
光が、きれい。

肌色が、とてもきれい。


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観る前はね。
「第◯夫人」とか聞いて。

さぞかし、ドロドロしてるんだろうなー
って思いました。

日本の大奥みたいにさ。
第一夫人が、お局的な存在で。
嫉妬とか、怨念とか、野望とか、復讐とか。

そういったものでさぞかし、黒々ドロドロしてるんだろうなー
って思いました。
でもね...

意外と、そんなことなかった。

例えばね。
具体的に言うと

夫との閨事について。
三人の妻が共有し合うシーンとか、普通にあるの。

「旦那様は、こんなふうにされるのが好きなのよ」
「あなたも試してみて、練習よ。ほら」
「第一夫人は、荒々しくされるのが好きなの」
「言ってなさい。子どもを産むと女は身体は変わるのよ...うふふ」

なんてな具合で。
意外ときゃっきゃしていて。
和気藹々と、平和なの。


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日常生活は、自給自足が基本みたいで。
食べるものは、自分たちで調達したり。
蚕を育てて、糸を紡いだり、織ったり。
そういう諸々のことも、家の者の仕事でもあるのね。

鶏の締め方を教えてもらったり。
何が毒草なのか、教えてもらったり。

同じ家に住むものとして。
生活の知恵を共有するシーンがたくさんあって。
そのひとつとして。
夫の性癖も、共有してるみたいなのね。

男性から見ると、ひぃぃぃ!ってなるかもしれないけれども。

こちらから見ると。
なるほど、なるほど。
だってさ...

家の中が平和に回る方が、ずっとずっと大事だもの。

さて、このように。
妻を何人も持つことができて。
毎夜毎夜とっかえひっかえ...だなんてハーレムか!
しかも、その妻が仲良し同士だなんて、天国か!

って、途中までは見えるんだけどね。
とはいえ、やはり。
この制度には、無理があるのね。


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というのもね。
「結婚相手」とは

婚礼当日に初めて、顔を合わせるものだから。
親同士が勝手に決めて、覆せないものだから。

仮に、結婚前に好いた相手がいたとしても。
なかなか、一緒になることができなかったみたいなのね。

それゆえの悲恋が、誰かの体験として語られたり。
実際に、目にすることになったり。

諦めた人、抗う人。
拒まれる人、亡くす人...
いろいろ、出てくるの。

いずれの立場も、とてもつらい。
とても、つらい。

年頃の男女が、家の持ちものだと考えられていた時代。
「結婚」が当事者の気持ちを無視して、政治的に利用されていた時代。
家の存続のため、村の発展のため、国の繁栄のため...
大義名分は、いろいろあったと思うけど。

実は陰で、たくさんの人が泣いていたこと。
たくさんのしあわせが、犠牲になったこと。

そしてそれが、すごく長らくの間続けられていて。
日本だって、ほんの数世代前はおんなじだったこと。
いや、いまだに残っているところだってあるかも。

そっか。
当事者や、その近しい立場から見ると。
こんな気持ちになるのか...って


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この作品はね。
公開直後から、観たい観たいと思っていたものの。
なかなか、劇場まで伺えなくて。
そうこうしているうちに、こんなニュースが流れてきたのね。

www.huffingtonpost.jp

女性監督が"いま"こういう作品を映画にするということは
"いま"表現したい、強い「なにか」があるからでしょう。

行ってみたらやはり、思った通りで。

たしかに官能的なシーンは、あるにはあるけれども。
主訴はそこではなくて。
だけど、ちゃんと必要なシーンだった。

結論から言うと、観て、よかった。
本当に、よかった。

虐げられたり、軽んじられたりした女たちだけでなく。
自由に生きられなくて苦しむ男たちも、書かれているの。

舞台はたしかに、19世紀のベトナムだけれども。
まちがいなく、これは"いま"観るべき作品だ。


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歴史を知るっていうのはさ。
そっかー昔は大変だったんだなー
ってだけではたぶん、足りなくて。

いろんな差別とか偏見とか。
今でもまだ、窮屈な鎖がたくさんたくさん残っているけれども。
そのひとつひとつに声をあげて、話し合って、丁寧に取り除いて...

そういう、地味な行為を諦めずに続けていくことが。
世界と、そのあとの世代の進化に繋がるんじゃないかな、って

「世界を変える」って、誰かひとりの力で突然できることではないもんね。
実はそういう、ちいさな不断の努力がいちばん大事なんじゃないかな、って

変化はゆっくりすぎて、わかりにくいかもしれないけれども。
10年、20年、50年、100年...って続けたら、きっと見える。

世界は、変えられる。

名も無いわたしたちにも。
続ければ、きっと。