うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『セトウツミ(2016)』に関する記憶 - 仲良しDKに和みながら、大阪のカラフルさと包容力について考えてみたお話

どうも、あなたのぴのこです。
今回は、このお話。

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映画『セトウツミ』予告

尚、この作品は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。

①断じて腐女子ではないけれど、仲のいい男子校生を見ていると和む→Yes
②お笑いに関しては、さまぁ〜ずヤーレンズおぎやはぎが好き→Yes
③大阪人に対して、若干の苦手意識がある→Yes

その心は...


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わたしね。
10代の頃、めっちゃ生きづらかったから。
「お前を17歳の頃に戻してあげよう」
って、今神様に言われたところで。
丁重に即お断りする自信があるんだけど。

「若いっていいなー」
って和むのは、だーいぶ好きです。

しかも、世の中にはさ。
女子校生の物語って、わりと多いけど。
男子校生が仲良くしてる物語って、なかなかに少なくない?
BLを除くと。

わたしは腐女子ではないのだけれども。
男子校生がじゃれあってるの見るのは、けっこう好きです。
いいなーいいなー。かわいいなー。
ってなる。

それでわたしは、台詞が秀逸な映画が好きで。
登場人物が少ない映画が好きで。
事件らしい事件も起こらない映画が、大好き。

だからこの映画は、わたしが愛さずにはいられない要素をすべて満たしてるんだけど。
惜しむらくは、なぜこの映画を劇場公開中に観なかったか?という...。
(プライベートで追いつめられてたからねー)


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さて、そんな訳で。この作品。
なぜか、タンゴがめっちゃ流れます。
オープニングから、がっつり。
最初、え。なんでタンゴ?ってめっちゃ違和感あったよね。

だってさ。
タンゴって、どういうイメージあるか?って言ったらさ。
大袈裟なぐらい、ドラマチック。
愛とか人生とか、ドでかいテーマを扱ってそう。

そんな感じでしょう。

わたしはワールドミュージック好きだから、タンゴも大好きなんだけど。
わたしが好きな演者はみんな。
演奏するときに、小難しい顔してる。
なんなら、ちょっと目とか閉じてて。
若干、眉間にシワとか寄っちゃってる。

(※disってないよ!何度も言うけど、タンゴ大好きだよ!!!)

で、ですよ。
こーんな男子高校生のしょーもないダベりに、なんでタンゴを当ててんのか。
って、最初めっちゃ違和感あったのね。

でもねえ、でもねえ。
観ていくうちに、わかった。

子どもの頃って、めっちゃ楽しかったよな、なんか
こう...小学校の頃いちばん楽しかった、俺
なんかさ、夏祭りとかクリスマスとかさ
昔あんな楽しかったのに、年々
「あれ?こんなもんやったっけ」
って思うね
ほいで、もうあんときの楽しさをこれからもう一生越えられないんかな
って思たら、めっちゃ怖ない?

どいつもこいつも
走り回って、汗かかなあかんのか
なんかクリエイティブなこと、せなあかんのか
仲間と悪いこと、せなあかんのか
この川で暇をつぶすだけの青春があっても、ええんちゃうか

内海「まあ、でも、コミュニケーションなんて演技力やん
   親しくない奴と喋ってて
   そんなに興味もないし驚いてもないのに
   『えー?そうなんですか!えー!?』
   って言える奴が、コミュ力高くて可愛がられんねん」
瀬戸「かーっ!なんか嫌やな、そういうの」
内海「まあ、でも、それが大人になるってことなんちゃう?」

そっか。
彼らにとっては、これがドラマなんだ。
大真面目な人生なんだわ。

大人になってから帰りたくなるような青春て、ね。
部活でも壁ドンでもなくて。

案外、こういうことなんじゃないかなって


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そんな訳で。
高2男子である瀬戸と内海だけどね。
出会いからして、なんというか...いいんだ。空気が

瀬戸「誰やねん?お前」
内海「わりとこっちの台詞でもあるぞ、それ」
瀬戸「ちょー聞いてくれやー
   ほら俺、虫めっちゃ嫌いやん」
内海「いや、知らんがな」
瀬戸「もう部屋にさー、大量のコバエが発生して寝られへんねん」

わたしは3年間だけ、神戸に住んでたことがあって。
東京と大阪の違いについて、よく感じることはあるんだけどね。
なにがいちばん違うって...

大阪の人間は、距離が近い。
めっちゃ近い。基本的に

「東京の人間は冷たい」って、よく言われるけどね。
わたしはあれ、全然同意しなくてね...
スルーも放置も、優しさでしょう。
でも、そこにいちいち世話焼きたくなるのが、西の人間なんだと思うの。

要するに、距離感の違いでね。
関西の人...中でも特に、大阪の人はね。
初対面からめっちゃ、距離近いの。

だからこの瀬戸の距離の詰め方は、めっちゃあるあるで。
「知らんがな」な、自分の話も。
いきなり、ぶわああああっと喋ってくるんだよね。
向こうの人は。

悪く言えば、厚かましいんだけど。
よく言えば、人懐っこい。

瀬戸もほら、かわいいじゃない。


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あと、当時大阪府民ハンパねーなって思ってたことがね。
語彙力と反射神経ね。

わたし、当時スーパーで耳にしたことあるんだけどもね。

女児   「ちょー聞いてーおかん!今日なー...」
女児おかん「待って待って!その話、オチある?」

おそろしいことにこの女児、どう見ても5、6歳だったからね...
大阪という地は、ボケとツッコミの英才教育がハンパないの。

だからね。
この中だと、内海は「クールなインテリメガネ」だから。
ボキャがあるのはまあ、いいとして。

瀬戸だってね。
「ちょっとおバカなツンツン頭」ってなってるけどね...

内海「まあ、普通のどこにでもおるおっさんや」
瀬戸「何歳ぐらいやった?」
内海「30代から50代ぐらいかな」
瀬戸「なんや、その白骨死体ばりの年齢の幅は」

内海「それやったら、言わしてもらうけど
   瀬戸って、アフリカオオコノハズクみたいなフシあるよな」
瀬戸「どういうこと?それ」
内海「いや。自分より弱い相手にはおおーきく見せるけど
   強い相手に対してはほっそくなんねん
   すごいで、ほんま
   相手の目線に合わせて、体の向きを変えてまで必死に」
瀬戸「ある意味、ひたむきなひまわりのようやな」

内海「まあ、そうやなあ
   学校みたいな集団というか組織になるとどうしても
   協調性や和を重んじるのが当然っていう空気があって
   同調圧力に従い続ける理不尽さっていうのは
   自責や他責の悪循環...
瀬戸「うん、お前」
内海「ん?」
瀬戸「むずかしい言葉使っとったらええ思てるフシがあるよな」
内海「まだやんの!?」
瀬戸「後半、フランス語かと思たわ」

瀬戸「部屋にさ。引くぐらい、でかい蜘蛛出た」
内海「どれぐらいの?」
瀬戸「成人女性のパーぐらいのやつ」
内海「うっわ、最悪やん
   どうしたん?それ」
瀬戸「いや。殺したくないし
   もう、とにかく出てってほしいやん」
内海「そやな」
瀬戸「だから、ネットで調べたら、木酢液が苦手や言うから
   部屋に散布したんや」
内海「うん」
瀬戸「ほんだら、おじいちゃん出ていったわ」

ね、ほら。
瀬戸だって、語彙も脊髄反射もなかなかのもんでしょう。


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あとはほら。脇役のバラエティさね。
瀬戸おかんが、パーマ当ててきて失敗すんのとか。
上下豹柄なのにさらに、靴下までピンクに水玉っていう、インパクトのある全身柄コーディネイトとか。

大阪のおばちゃんあるあるだもん。

それから、大阪のおばちゃんて、なぜか必ず鈴つけてる。
財布かキーホルダーか自転車の鍵か、どれかに必ず。
だから瀬戸おかんがちりんちりん言いながら登場してくるあれも、全くあるあるで。
あとはもう...

飴ちゃん持ってたら完璧やわ。

瀬戸おかん「正吉 早よ帰りや
      今日カレーの初日やで」
瀬戸   「何日か続くの前提やん」

でも、瀬戸おとんだって、負けてないよ。

トップスがジャージっていうのはまあ、おしゃれキッズでもいるでしょう。
ラッパーでも、いるいる。

でも、下がジャージって、だーいぶぐん!と難易度上がるわ。
それに、便所サンダルでその辺寝っ転がるてもう...

大阪だなー

パジャマに便所サンダルで、スーパーに買い物に来るおじいちゃんとかさ。
スーパーのショッピングカートを、そのまま家まで持って帰ってきちゃうおばあちゃんとかさ。

大阪って、わりと普通にいるもん。

あと、あのバルーンアーティストもね。
あんな大阪弁が流暢で、顔だってド和顔なのに。

ベラルーシ出身て!
名前がバルーンさんて!!!

嘘やん、絶対...

でもそういう、ね。
明らかに怪しい人も、嘘臭い人も。
ええやんええやん。おもろいやん。で大雑把に受け止める。

それが大阪人。

東京の人間だったら。
見ちゃいけません!っておかんに言われて、早足でスルーするような存在でも。
気になったら、ガンガンに話しかけちゃう。

それが、大阪人。

大阪って、不思議な包容力があるんだよね...。


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さて。作品の魅力はね。
9割方、瀬戸と内海のしゃべくりです。

瀬戸「かわいいー」
内海「樫村さんて、お寺の子なんやろ」
瀬戸「袈裟姿見たいー
   え、彼氏おるんのかな」
内海「どうやろ」
瀬戸「ちょ...訊いてきてや」
内海「いやや、そんなん」
瀬戸「いや、頼むわ
   バナナあげるから」
内海「なんでバナナでイケる思たん?」

瀬戸「『相乗効果』ってやつやろ」
内海「ああ、『シナジー効果』ってやつな」
   ...腹減ったなー」
瀬戸「さっき、ハンバーガー買おう言うたらいらん言うたやん」
内海「いや。俺、白ご飯の方が好きやねん」
瀬戸「ほーう、『ライス』ってやつやな」
内海「うーん...え?
   『シナジー効果』でイラッと来たん?
   ほんで、一矢報いたかったん?」
   『ライス』て...!!!」

これぐらいにしといてやろう。
採集した台詞全部上げてたら、キリないわ!

なんだろう...どっかんどっかんな大爆笑はないんだけど。
んふっ、くすっと来て、ほこほこするような。
そういう、笑いなのね。

脱力系で、それでいて。
このコンビ、仲いいんだろなーっていう。
そういう笑いが好きな人にめっちゃおすすめ。

でもね、でもね。
一見、とりとめのない話をだらだらしているように見えるんだけど。
「神妙な面持ち」にしろ、「フシがある選手権」にしろ。
オチでちゃんと、戻ってくるんだよね。

原作がすごいのか、脚本がすごいのか。
とにかくもう、構成が素晴らしいの。


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という、瀬戸・内海のこの二人をね。
池松壮亮と、菅田将暉の二人が演ってるのが本当に素晴らしい。
この二人をキャスティングをしてくれた人に、わたしね...

そうめん贈ってあげたいぐらい。

池松壮亮はもともと、どの役でも髪型もっさいけど。
あの白ソックス!
あの、学ランのインにYシャツ着ちゃうところ!

あの衣装を担当した人に、わたしね...

カルピス贈ってあげたいぐらい。

そうなんだよ、そうなんだよ。
もっさいネクラ男子は、白ソックスで。
若干おバカなチャラ男子は、ショートソックスにコンバースなんだよ。

そこだよそこーーー!!!

でね、でね。
また話戻すけど。

わたしがここで、なんぼがんばっても。
台詞の採集は文字面でしか、ないけれど。
この宝石のような台詞をね。

あの二人が演ることによって。
あの、間。
あの、表情。
あの、起伏。
あの、コントラスト。

それらが吹き込まれることによって、命を持った笑いになるの。

わたしは『アメとムチ』と『出会いと別れ』のネタ(!)が好きです。
10年後の二人の話も、観てみたいような。
そんなような。

おまけとして、二人のネタ(※本編未収録)を貼っておこうかな。


池松壮亮&菅田将暉!映画『セトウツミ』特報1「けん玉」


映画『セトウツミ』特報2「タイミング」


映画『セトウツミ』特報3「スタンディングオベーション」

おやおやー?瀬戸の第2ボタンの様子が...