そんな訳で、今回は『わたしは、ダニエル・ブレイク』です。
尚、この作品は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。
①働けなくなったときの不安なんて、考えたくない→Yes
②たらい回しなお役所仕事にムカついたことがある→Yes
③困っている人を見かけても、つい素通りしてしまう→Yes
その心は...
(※劇中の台詞については、いささか心許ない記憶に頼ったものであるため、正確ではない可能性が含まれます。ご了承ください)
- 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
- 発売日: 2007/04/25
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まずは、不定期連載。
ぴのこさん、日本版ポスターに激おこ!のコーナーです。
ときどき、思い出したように噛み付いてみる。
ちなみに前回は、こちら。
前々回は、こちら。
今回の槍玉は、このポスターです。
人生は変えられる。隣の誰かを助けるだけで。
名匠ケン・ローチが<今、だからこそ>全世界に伝えたいメッセージ。
涙と感動の最高傑作。
つくづく、日本の配給会社って。
「涙」と「感動」好きだよねー
このコピー、ね。
「あながち間違ってはいないけれども」
ぐらいのレベルだと思いますこれ。
このコピーから受ける最初の印象のままで行くと。
ちょっと、ズレが生じてくる。
だって実際、映画館を出るときに。
カップルのこんな会話を聞いたもん。
「あんまり、泣けなかったね...」
「うん...なんか、重たい話だったよね...」
今日び、日本で映画を公開するということは。
「涙」と「感動」を売りにしないと。
お客は入らないのかもしれません。
「涙」と「感動」を売りにしないと。
チケットは売れないのかもしれません。
たしかに、一時的にはお客も入るかもしれないよ?
でもね...
「涙」と「感動」目的で来た人が、ね。
思てたんと違ーう!ってなったら
どんどん、コピーを信用しなくなるよね。
ネットの評判だけ、見て。
★3か...じゃあ、観に行かなくていっか。*1
って、なるよね。
どんどん、どんどん。
映画館に足を運ばなくなるよね。
いいの?それで
ほんとに、いいの???
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これは、社会派作品です。問題作です。
観終わった後、誰もが考えさせられる作品です。
ケン・ローチ監督を知ってる人から見たら、常識だと思うんだけど。
わたしみたいに初見で知識のない人間からしたら...
コピーから受ける「ハートフルな感動作」って印象とは、だーいぶ違う。
途中でわたし、何度か泣いたけど。
どちらかというと、悔しくて泣いてた。
やるせなさすぎて、泣いてた。
びっくりしたよ。
ドキュメンタリーかと思った。
リアルすぎて。
目の下のクマがすごかったり。
履いてるものが接着剤で修復しまくってる靴だったり。
Gジャンにコートという、防寒目的onlyの重ね着だったり。
なのに、ボトムスはジャージだったり。
お世辞にも、ごはんがおいしそうに見えなかったり。
ここまでは、まあ。
メイクさん・衣装さんの仕事すげー
小道具さんすげー
って話なのかもしれないけれども。
シングルマザー役の俳優が、すごいの。
パーフェクトな、洋梨体型なの。
... ...
いやいやいや。待って待って!
最後まで、聞いてって!
これ、すごいことなんだって ... !!!
だってさ、こういうテーマで、こんな役柄で。
美人さんが出てきたら、どう?
スタイル抜群だったら、どう?
全然、説得力ないじゃん。
言うてもあんた、美人じゃん。
恵まれてるじゃん。
って、思っちゃうじゃん。
これはそういう類いのことを感じさせる要素を極力、排除している作品なんだと思うの。
できるだけ、作りすぎずに。
できるだけ、リアルに寄せて。
観客の身近な問題と受け取ってもらうために。
隅々まで、細心の注意を払われた作品なんだと思うの。
だからこそ、それだからこそ。
ケイティが缶詰を開けてしまう、あのシーンで。
ダニエルが「人間の尊厳」を主張する、あのシーンで。
ラストのスピーチで。
あそこで心臓、鷲掴みにされるんだよ。
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堂々巡りの、たらい回し。
あまりにもあまりにも、酷いもんで。
最初は、笑っちゃうかも。
でも、話が進むにつれ。
あなたは、役所に怒るでしょう。
国に、怒るでしょう。
じゃあ、どうしろと???
と、怒るでしょう。
役所は助ける気なんてない
とことん、みじめな気にさせるだけ
そんな救いがない中、絶望的な状況で。
手を差し伸べてくれるのが、ね。
同じように、助けが必要な人の手だったり。
小さな市民ボランティアの手だったりするのね。
ダニエルは、同じように理不尽な目に遭っているシングルマザーのケイティに声をかけた。
でもね、でもね。
よくよく注意して、見てみると。
ダニエルに声をかける人も、たくさんいるの。
ダニエルの元同僚も、そう。
隣人のチャイナも、そう。
「困ってるだろう?
なんかあったら、言ってくれ
遠慮しないで、何でも言ってくれ」
こんな言葉を、彼はいろんな人から。
何度も何度も、受け取ってるの。
一つ、聞いていい?
前に助けてくれた?
たぶん
じゃあ、助けさせて
見てよ、ほら。
戻ってきたよ。
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あまりにも、リアルで。
ちょっと、他人事には思えなくて。
帰り途、わたしもいろいろ考えちゃった。
しっかり、監督の術中にはまっちゃった。
もし、仮に。
日本で同じような状況になったら???
そしたらねえ...
だーいぶ、絶望的だった。
いや。もっと悲惨かも。救われないかも。
今の日本の社会だと、ね。
なかなか、声をかけられない。
どう声をかけていいのか、わからない。
どう助けられるのかも、わからない。
いや。もっと、ネガティヴな理由かもね。
面倒ごとには、巻き込まれたくない。
自分のことで、いっぱいいっぱい。
赤の他人にまで、かまってられるか。
わたしも、そう。
せいぜい、道を訊かれて答えるとか。
電車で席を譲るのが、精一杯。
日本の自殺率が高いのは、いろんな理由が複雑に絡み合っているだろうけど。
この冷たさと無関心さも、一因にありそう。
どんなに絶望的な状況でも。
自分のことを気にかけてくれる人が一人、いるだけで。
話を聞いてくれる人が一人、いるだけで。
励まし続けてくれる人が一人、いるだけで。
人には追い風が必要だ
そうだろう?
そっか。
「声をかける」って実は、それだけで。
とても大きな力になるのかも。
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「大きな力」つながりで、でもう一つ。
映画を観て、チャリティに参加!
映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』は、本映画を通じて得られる収益を、貧困に苦しむ人々を支援する団体に、有料入場者1名につき50円寄付いたします。
30年続けるプロジェクトって、ガチ度すごい。
本気だ。
声掛けの勇気がまだちょっと足りなくて...って人もぜひ。
まずは、始めの一歩からでも。
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あと、そうそう。
それからね
これ撮ったのが80歳のおじいちゃんっていうのがまた、びっくりで。
「おじいちゃんて!名匠ケン・ローチを捕まえて何たる無礼者!!!」
叱ってください...無知は罪だよほんとに。
ええと...そうだなあ...
大好きだったおじいちゃん監督の遺作や最新作を観て。
淋しくなったことってないですか。
わたしは、何度もあります。
監督業って、感性も体力もアンテナも。
時代を読む力も細かいところまで気を配る力も。
ほんっとに、いろいろなものが大切だと思うのね。
シルバーな監督は、ネームバリューやカリスマ性は抜群にあるんだけど。
それらとのギャップがどうしても、激しくなってきて。
観ててどんどん、淋しくなることも多かったんだよね。
最後の作品は必ずしも、名作ではないよね。
ピークはもう、だいぶ前なんだよなー*2
って感じることの方が多かった。
しかたのないことだよね、って思ってた。
みんな、歳はとるんだもの。
でも、この作品。
蓋開けてみて...どう?
引退撤回してまで、強く伝えたいことがあって。
世間に物申して、掻き回す気満々で。
しかも、完成してみればクオリティも最高で。
パルム・ドールまで獲っちゃった。
そんな、後期高齢者。
うっわー人生まだまだ読めないわあ
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