うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う(2016)』に関する記憶

そんな訳で今回は、『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』です。

f:id:pinocorita:20170307215220j:plain


『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』予告

尚、この作品は以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。

①目の前のあれやこれ、全部壊せたら気持ちいいだろうなーと思っている→Yes
②実は自分は、サイコパスなのではないかと疑っている→Yes
③気づくといつも「クソ」と言ってしまっている→Yes

その心は...

(尚、劇中の台詞については、いささか心許ない記憶に頼ったものであるため、正確ではない可能性が含まれます。ご了承ください)

永い言い訳 (文春文庫)

永い言い訳 (文春文庫)


まず、このタイトルね。
詩的でうつくしくて、個人的には好きなんですけれど。
この言葉を意識しすぎるとミスリードされてしまって、若干わかりにくくなるかも。
わたしもいささか混乱して、2回観てしまいました。

原題は『破壊』ですって。
至って、シンプル。
やはり、そこを主軸に追ってった方がわかりやすいかなー?
ひうぃごー★


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

主人公デイヴィスなんですけどもね。
俗に言う、成功している金融クラスタです。
若いのに、超エリート。超金持ち。
でも、妻ジュリアを亡くしてしまったのにも関わらず。
まったく悲しむことができない男でもあります。

ジュリアはいい人間だった
笑うと鼻が鳴り
特別支援学級の教師で
9.11の映像で泣いた
 
それ以外はよくは知らない

なぜ結婚を?
 
さあ?楽だったからかな

こんな類いの台詞が山ほど出て来ます。
どれも淡々と語られるんだけどね。
こんなの絶対、ジュリアに聞かせられないよ...。

事実、鏡に向かって泣こうとするんだけど泣けない。
っていうシーンがあるんだけど。
なかなかに、酷いもんです。

淡々と、はしているんだけど。
デイヴィスの内側ではやはり、困惑していたんだろうね。
誰かに”正確な状況を”吐き出したかったんだろうね。

それで、無関係な相手への手紙という手段をとった。

で、デイヴィスにしろ、手紙の受け取り主のカレンにしろ。
その後の行動がお互いややストーカーじみていてね...。

「プロ失格ね」
っていうか...いやいやいや!
冷静に考えると、そこで偶然会うとかこわいから!!!

ってなるんだけど。
まあ、二人ともいろいろと不安定な時期だったからね!
そういうこともあるかもしれないよね、しょうがないよね!

ということで、脳内処理しました。
ここ引っ掛かってツッコミ入れてると、先に進めないからね。
次行こ、次!はい


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

そのうち、デイヴィスは、カレンの息子クリスとも接点ができます。
第一印象は最悪だけどね。

初めて顔を合わせた朝なんてね。
「まーた、おかんが連れ込んだ男かよ...」
って顔してる。
ちょっと露骨なぐらい、だだ漏れてる。

でね。徐々に彼とも心を通わせていくんだけどね。
「フ●ック」という言葉遣いに対するやり取りが、わたしは個人的に大のお気に入り。

ファ●クは素晴らしい言葉だ
ファッ●はいい言葉だが
多用すると価値が下がるし
バカに聞こえる

ここー!ここーーー!!!

もし、彼がクリスの父親だったら。
あるいは、クリスを子ども扱いしていたら。

「●ァックなんて言葉使うな」
って叱るよね。

デイヴィスは決して、この言葉を封じている訳ではないの。
使いたくなることもあるよねーってことは理解してるし。
使い方が問題だ。って言ってるの。
使い方のせいでバカに見えたら損だ。って言ってるの。

結果、そこがクリスに影響を与えたのだと思うの。
クリスだって決して、バカじゃないんだよ。

母親が彼のことを称して
「見た目は12歳、実年齢は15歳、行動は21歳」
って語るシーンがあるんだけど。
年齢にそぐわない賢さがあって、それを自分でも持て余している感じ。
だからこの件についても、彼なりに熟考したっぽい。

で、これ以降、デイヴィスもクリスもね。
「フ●ック」という言葉を普通に使うんだけど。
それがすごく、効果的な使いどころなの。
すごく効く「ファック」なの。(...あ!

わたしも曲がりなりにもHIP HOPへッズなので。
ついつい、悪い言葉も使いたくなっちゃう。
ついつい、ネットスラングとか出そうになっちゃう。
でも、ティーンズじゃあるまいし。
頻度と使いどころを考えないとほんと、バカっぽく見えるよね。
そうだよねえそうだよねえ


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

で、破壊行動ですよ。
きっかけはまあ、義父のこの言葉なんだけど

心も修理も車の修理と同じだ
まず分解しろ
隅々まで点検して
再び立て直す

デイヴィスはこの言葉が気になって。
あらゆるものを壊し始めるのね。
そしてついには、結婚生活の破壊行動に...。

あなたの家って、素敵ね
電化製品以外は庶民の夢だわ
 
僕は嫌いだ
何もかもピカピカで

うん、わたしも嫌い。ああいうお家。
窓は大きくて、採光ばっちり。
明るくて大きなキッチン。
ベッドルームには、ホームシアターシステム。

だけど、なんというか...
明るくて、ピカピカだけど。
お家っぽくないの。
ホテルか何かみたい。
無機質で、寒々しいの。

心がやられて、頭がぱつんぱつんなときはたしかに。
無心に身体を動かすことが効くのかも。

そうこうしながら、破壊行動が進んできた時期に。
デイヴィッドが道端で、車道で、階段で、職場のエントランスで。
かなりILLなダンスをするシーンがあるんだけど。
このシーンも、お気に入りですわたし。

一見して、あ。これ触れたらやべーやつ。
ってわかるんだ。
でも本人、すっごくたのしそう、気持ち良さそう。
解放されて、人間性がちゃんとそこに、いる。

壊して、よかった。
本当に、よかった。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

一方、義父はね。
娘の名を冠した奨学金事業を立ち上げようとしてるんだけど。
デイヴィッドはそこにずーっと、かすかな抵抗を感じ続けているのね。

違和感があるんです
妻のためには何かしたいが
これはどうも

この違和感こそが、彼の妻への愛情であり。
誠意だったのかも。

それでその後、破壊行動を完遂した後。
デイヴィッドはようやく、「妻ジュリアのためにしたいこと」を見つけるんだけど。

それがもう、うつくしくて。
そんな名前だけの偽善的な事業よりもよっぽど、うつくしくて。
ジュリアもきっと、喜んでくれるでしょうそうでしょう。

壊して、よかった。
本当に、よかった。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

ジェイク・ギレンホールナオミ・ワッツが素晴らしいのはもちろん。
息子クリス役の15歳もすばらしかった!

というか、あんなきれいな顔。
ひさしぶりに見ました。

f:id:pinocorita:20170308002420j:plain

手足が細くて、長くて。
肩なんかも、とっても華奢で。
黒のネイルもよく似合ってた。
複雑な役柄だったと思うけど。
全然違和感なく、さらっとこなしてた。

ジュダ・ルイス。
彼の名前を記憶しました。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

100%きれいな善人が誰一人出てこなくて。
みんなそれぞれ、弱みとか後ろ暗いところがある。
淡々と描かれてはいるんだけど、妙に人間臭くて。

そこがとても、よかったです。

逆に、泣く気満々で来た人なんかは、肩すかしを喰らっちゃうかも。

でもほら。
人間死んだからって、急にいい人になる訳じゃないでしょう。
近しい人が死んだからって、突然愛情が湧いたりはでしょう。

そんなふうに、変にお涙頂戴なところが全然ないので。
そこに説得力があって。
逆にわたしは泣けました。

ただし、3秒だけ。