そんな訳で今回は『バグダッド・カフェ』です。
バグダッド・カフェ ニュー・ディレクターズ・カット版(字幕版)
すごい!1987年西ドイツ作品て...
西ドイツ!もう無いよ!!!
この作品は、こんな症状におすすめ。
①好意がまっすぐ伝わらなすぎて、最近心が折れ気味である→Yes
②女同士の友情なんて信じない→Yes
③女なんて、ちょろいちょろーい!恋愛工学万歳!→Yes
その心は...
よかれと思ってやったんだけど、ね...
たしかにブレンダはガミガミ言い過ぎだけど。
客が勝手に自分の店掃除し始めたら、おいこら!ええ加減にせえよ!ってなると思う。
「悪かったかしら?」って...悪いわ!!!
そんなにうちの店汚いかよ?厭味なヤツだな!って思うだろうし*1、
自分の家族を取り込み始めたら、何企んでんの?ってなる。
ブレンダ、悪くない。全然、まったく
でも、それはそれとして。
ジャスミンだって、だーいぶがんばったと思うよ?
隠れてマジックの練習、めっちゃしてる。たぶん
おせっかいと高コミュ力は、オバチャンの特権だし。
あとはもう、男物の服とひげ剃りとマジックセットぐらいしか無かったんだもん。
スタート時の、手持ちの札。
それでもちゃんと、自力で進化した。
strangerから、親友に。
作り話だろ?そんなにうまくいくかよ!?
ってまあ、そう熱くなりなさんな。
出会いは最悪だったのに、いつの間にかお互い唯一無二の存在になるとか。
現実でも、よくあることでしょう?
みんな、失敗する。みんな、痛い。
そんなのがあの頃は酷かったねーなんて、後から笑い話にもなっちゃうとか。
現実でも、よくあるじゃない。
空回りしてるあなたの好意行動、ジャスミンよりよっぽど空気読めてる!
だいじょぶ!
女同士の友情?あるよ!
各々旦那に逃げられてるし、出会いのシーンでは二人とも顔拭いてるし*2。
この二人、真逆に見えて実は共通点も多かったのかも。
なかなか噛み合わない二人の分岐点となるのが
「自分の子どもと遊びな!」
「...いないの」
↑ここ!ここな訳で。
子どもに関することって、女性同士だと痛みを察しやすいのかもしれない。
多くを語らずとも。
実際ジャスミンも「(ほしかったけど、今は)いないの」と読めるような表情してる。
その直後から、ブレンダはジャスミンに丁寧に接するようになるんだよね。
ただのお客さんじゃなくて。
よその人ってだけじゃなくて。
「今晩は、ミス・ジャスミン」
「今晩は、ミス・ブレンダ」
「さようなら、ミス・ブレンダ」
「さようなら、ミス・ジャスミン」
ちょっと気取ったようにさえ、見えるけど。
親しき仲にも、礼儀はあるんだ。
相互尊重、とても大事。
あと、おかえりなさいの再会シーン!
あそこも本当に素敵。
すごい遠くから駆け寄ってきたのに、近づいたらたっぷり10秒見つめ合って。
その後にハグを、2回。いとおしそうに。
わたしが観た中でbest1抱擁、ここですここー!*3。
フ●ッキュー!恋愛工学!
画家のコックスおじいちゃん。序盤からけっこうぐいっぐい、いきますね。
お花も甘い言葉も常に惜しまず...いいなあ、こういうキザなおじいちゃん。
老いらくの恋も悪くないかも、って思える。
で、ラスト、ついにプロポーズですよジャスミンに。
「一つ聞きたいんだが、ずっとここに滞在を?」「Yes」
「となると、また前と同じ面倒が起こる」「Yes」
「労働許可証とか、ビザとか... 」「Yes」
「そういう面倒を避ける方法がある」「Yes」
「つまり、アメリカ市民と結婚すれば...」「Yes」
「たとえば、私があんたに結婚を申し込んで...」「Yes」
「君が『イエス』なら、永遠にここにいられる」「Yes」
「結婚してくれるかい?」
Yesセットだったら、当然ここで『イエス』でしょうそうでしょう。
もちろん、ジャスミンの返事は...
「ブレンダと相談するわ」
おーい!恋愛工学、息してる?*4
その他、雑感
■巨尻、垂れパイ、大根足...すべてがいとおしい
たぶんこれ100万回ぐらい言われてることだと思うんですけどね...
観た人全員、ジャスミンのこと好きになる。
間違いなく、全員!
天使だから。まじでまじで
物語も序盤のうちは、ね。ただのオバチャンに見えるんですよ。
まあちょっと、標準よりだいぶオーバーサイズだけど、ぐらいの
それがもーう!
物語が進むにつれて、どんどん好きになるもの。
目が離せなくなるもの。
拭き掃除してるときにぷりっぷりに動く、あの巨尻のかわいらしさ!
部屋で勝手に自分の服着てるクソガキに、怒りもしないで「友達なら貸すけど」とか言っちゃう象並みの度量!
ミュールからはみ出す大根足!
サロメのピアノに聴き入っているときの女神感!*5
最高である!最高である!!!
■でも、ブレンダだっていい女だぜ?
お花のマジックを見てるとき*6の、びっくりぽん!顔と、その後の笑顔。
なんだよ?めちゃめちゃかわいいじゃねーか!
あと、『ブレンダ!ブレンダ!』の歌もね。
なんだよ?めちゃめちゃうまいじゃねーか!
なにせ、ツン期間が108分中70分もあるもんでね...
その後のギャップがすごい効いてくるんだよね。
■名曲である!名曲である!
わたしの場合、『Calling You』はHolly Cole版を先に知ったんだけど。
改めて聴き直してみると、原曲をだいぶアレンジしてるのね。ジャズだし。
ホリー・コール 『コーリング・ユー』
どっちが上だ下だっていうんじゃなくて。
Jevetta Steeleの乾いた、そしてちょっとざらっとした歌声は、
この映画に本当によく合っている。
詞も、ジャスミンの想いに限りなく近いしね。
この曲はたぶん、作品中6回は流れるんだけど*7。
どこの『Calling You』も、本当にいいんだよね。
ここしかない!ってタイミングで薄ーく、流れてきてくれる。
その都度、優しい。淋しい。切ない。
ああ、いい。じわあってなる。
■実は、最初に観たときは...
ごめん、寝てた。
ブレンダがぶりぶりに怒ってるところで、もたなかったんだろうと思う。
初めて観たのは、おそらく20年近く前で。
当時は、全然好きじゃなかった。
内容だって、今回観るまでほとんど憶えてなかった。
台詞の少ない静かな映画を観慣れてなかった。っていうのもあるんだろうな。
ここに閉じ込められている、埃っぽさとか錆くささとか砂混じりのざらざら感とか。
そういうのを楽しめる感性も、育ってなかったんだと思う。
なんだかんだでちゃんと変わってきているの、ちょっとうれしい。
今回は、心から好きとと思えた。この映画。
たぶんこの先、何度でも観ると思う。
心ががっつり折れて、もう無理!人に優しくなんてできない!ってなったら。
取り出して、これを観ようそうしよう。