うちのシナプスだって、本気出せば手をつなげる。

ごはんとお酒以外も上手に思い出せるよ!ということを証明する実験。尚、嫌いな作品をdisるほどのカロリーは残ってません。

『ブレードランナー2049(2016)』に関する記憶 - ”切ない番長”のライアン・ゴズリングにいざなわれて、あの黄昏色にがっつり同調してしまったお話

 どうも、あなたのぴのこです。
そんな訳で今回は、『ブレードランナー2049』です。

f:id:pinocorita:20171123203317j:plain

尚、この作品は、以下の気分のあなたにおすすめと考えられます。

①前作も観たし、内容もよく記憶している→Yes
②前作も観たし、内容もよく記憶しているけれども、正直なところ、よくわからなかった→Yes
③早く人間になりたい→Yes

その心は…

(※劇中の台詞については、いささか心許ない記憶に頼ったものであるため、正確ではない可能性が含まれます。ご了承ください)


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

まず、最初にお断りしておくけどね。

復習必須です。これ
予想以上に、前作の続編です。これ

もっと言うと。
予告編はこんな感じなんだけどね。


映画『ブレードランナー 2049』予告

この他に、3人の監督が手掛けた予告編があるんです。
可能であれば、出かける前に。
3つとも、観ておいた方が吉かと。


渡辺信一郎監督「ブレードランナー ブラックアウト 2022」予告


新「ブレードランナー」の前日譚『2036:ネクサス・ドーン』本編映像


バウティスタがレプリカントに!短編『2048:ノーウェア・トゥ・ラン』本編映像

予告というか…もはやこれは、ショートショートだね。
よくできてるなー。ほれぼれ

本編のあとに観ると、また違った意味でニヤニヤしちゃう。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

さて。これね。

「わたしはサイバーパンカーなので、
 2049観たいなーって思ってるんだけど。
 前作を観ないで行っても、大丈夫だよね?」

と、うっかり発言していたら。
周囲から、もんのすごい勢いで止められました。

あと、「サイバーパンカー」ってなんだよ?とも。

わたしね。
『フィフス・エレメンツ』も『ティコ・ムーン』も、好きなんです。
B.D.も好き。

pinocorita.hatenadiary.jp

これも、好き。

なので、頭でっかちにも。
「この世界観を、サイバーパンクと呼ぶのだ。」
ということだけは、知ってたの。
けどね。

なんでいつも、天気が悪いのか。
なんでどいつもこいつも、広告がデカいのか。
なんでどれもこれも、アジアンな謎下町があるのか。
だのになぜ、コンピュータに人間臭さを残してあるのか。

これらがどこから来ているのか?
ということについては、知らなかったのね。

ごめんなさい、ごめんなさい!
全部全部、ブレランからだったのね…。

結果、先月と今月のうちに。
前作を2回観てから、いざ、2049!となったんだけど。

デッカードって、誰?
レイチェルって、何者?

などと言おうもんなら、劇場で塩撒かれるところでした。
あぶなかったー


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

ただ、前作を観たときにね。
ちょっと、謎が多いのが気になって。

ほら、ブレランってさ。
「前作観た」って言うと、どのver.?って訊かれるじゃん。
わたしが観たのは、ディレクターズカット版なんだけどね。

ラストのユニコーンの折り紙で、デッカードが何を察したのか。
レイチェルだけが、なぜ生き残ったのか。

という部分が、2回観てもいまいちよくわからなかったのね。
夢の内容が外に漏れてるってことは、デッカードもレプリ…?
ぐらいまでは、まあなんとか辿り着けたんだけど。

でも、それだけでいいのかな?
合ってるのかな?
他にももっと、深い意味が隠されているのでは???
って、不安だったんだよね。

しかもこれ、観終わったあとにさ。
「…で、結局なんだったの?」
などと発言しようもんなら、全力で怒られが発生するやつでしょうそうでしょう。

だからね。
うわーこれ大丈夫かなー?
わたしのこの、悩ましいお脳の中身で追いつけるやつかなー?
って、かなり不安でした。
エンドロールが終わるまで。

うん。結論から言うとね。
大丈夫です!
前作よりも、かなりわかりやすい。

わたしの気がかりなお脳でも、大方説明できるぐらいだもの。
これからの人は、安心して来て来て。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

これ、前作でさ。
レイチェルしか知りえない幼少時代の記憶を、デッカードがぺらぺら喋って。
「それ、タイレルの姪の記憶の移植やで~」
って、ネタバレするシーンがあったでしょう。
レイチェルが目にいっぱい涙をためる、あのシーン。

あそこね。
デッカードまじ鬼畜!
美人になんて顔させるんだ!腹斬って詫びろ!!!

って、わたしなんか鼻息ふんっふんだったのですけれども。

2049は、わりとね。
この「切なさ」の部分にフォーカスしたようなお話のような気がします。

前作のレプリはさ。
「4年しか生きられないなんてやだ!もっと長生きさせろ!!!」
って、実力行使に出たじゃん。

で、そこから20年以上経過して。
レプリの寿命が飛躍的に伸びたらどうなるか。

人間に、なりたくなるんだよね…。

製造じゃなくて、繁殖で。
わたしたちも、母から生まれることができるんだ。

この部分に、一縷の望みをみんな持つの。
誰も彼もが、切ない。

誰も彼もが、人間になりたくて。
誰も彼もが、切ない。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

で、「早く人間になりたい」の理由がね。
人…じゃないや、レプリによって。
みんな、違うんだよね。

たとえば、みんな大好きジョイちゃんなんかはね。
彼女は、自分に"肉体"が欲しくてたまらない。

「何かあれば、君は消える」
「そうよ。本物の女のように」

でもまあ、ジョイちゃんについてはね。
他でも力いっぱい語られてそうなので。
わたしは、なぜラヴが好きなのか?って話を書きまーす

ラヴはね。
あの、エミュレータぐしゃ!のシーンなんかもね。
くっそラヴおのれええええ!!!
って、みんななったと思うんですけれども。

名前があるのか
特別な存在だな

ラヴはね。
「わたしは他とはちがうのよ(フフン」
って高飛車なだけのキャラではないんだ。
ただただ、踵落としとハイキックが鬼強いだけの女でもない。

彼女もまた、切ないんだよ…。
ラヴは実は、呪いをかけられているの。

君は最上の天使だ
そうだろ?ラヴ

ただただ、このひとことに囚われている人なんだよね。
ラヴって

「最上の天使」…強い言葉じゃないですか。
創造主からこんなこと言われたら…
全身全霊を賭けられるよね。

たったそのひとことが、いつも心の真ん中にあって。
命がけで忠誠を捧げた女でもあるんだよ。
ラヴって

うっわ切ないいいい…

そういう目で、あの退場シーンとか見返してみてよ。
すっごくすっごく、きれいだよ。ラヴ


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

あと、前作と較べると…そうだなー
前作はもっと、台詞がロマンチックだったよね。

たとえば、ロイ・バッティが機能停止するとかもね。
詩のような、哲学のような、台詞を吐くじゃない。

ああいう点は、前作の方が上かも。

ただ…
映像のうつくしさは、文句ないかなー
少なくとも、わたしは。

きれいになりすぎてて。
嘘くさく(100%嘘なので、こういう言い方もおかしいけど)なってたら、どうしよう…
って、思ってたんだけど。

心配なかった。
冒頭がだいぶ白くて、ややびっくりしたけど。
心配なかった。

まあ、製作で言ったら。
前作から35年経ってるからね…

建物にしろ、街にしろ。
お洋服や家具の素材感なんかもね。
やや未来的な表現になっているとは思う。

わたしが特にうつくしいなーと感動したのは

ウォレス社の壁と
ウォレスの目代わり?の謎飛行物体と
基本検査のためのパスワードと
大停電前のデータの形状と
荒野の巨像と
ラスベガスの廃カジノ。


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

特に、あのカジノね。
わたしが知ってる廃墟と、全然ちがった。

従来の廃墟ってさ。
もっと、暗かったり、寂れていたり。
荒んでいたり、おどろおどろしかったり。
怪しい人や生き物が住んでいたり。
犯罪の巣窟だったり。

わたしがイメージする廃墟って、そんな感じだった。

パッと見ね。
あのカジノって、そこまで荒れてないんだよね。
わりときれいなままで、客の荷物があったり。
お酒も、100万本あるとか最高じゃん!天国じゃん!

って、わたしなんかうっかり思っちゃったんだけど。
いやいや、ちがう。そうじゃない。

たぶん、あのホテルさ。
「あんまり荒れてない」んじゃなくて。
荒れているようにみえないための、あのオレンジなんじゃないかな。

「あんた、もしかしてチーズ一切れでも持ってないか」
「宝島か」

ゴージャスなナイトクラブには、
VRのエルヴィス・プレスリーがいて。
マリリン・モンローがいて。
重厚なバーには、フランク・シナトラがいて…

でも、大体バグってたでしょう。
最高の大音響で、壮大にバグってたでしょう。

だから、あそこも。
ほんとは、相当荒れてるはずなんだよね。

「この曲が好きだ。
 続けるか、それとも1杯飲むか」
「酒にしよう」

「名前は?」
「捜査官K…」
「それは名前じゃない、製造番号だ」

だけどさ。
あれだけ強いオレンジだったらね…

埃だって、錆だって、よくわかんなくなっちゃうよね。
そういうのを全部、曖昧にするための色なんだ。

そして、オレンジ色は黄昏の色。
デッカードの心象風景でもあるかもね。

…って思ったら、あの色がやたらと優しい色に見えて。
めちゃめちゃ泣けました。うー


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■

レプリの感情もさ。
前作はもっと、単純だったように思うんだよね。
反乱の原因だってさ。

「もっと、長生きさせろー!うおおおおおー!!!」
って、ほぼそれだったじゃん。

でも寿命がもっと延びて、ネクサスの進化がこれだけ進むと。
感情も、複雑になるんだよね。

お前ら新型は、クソな仕事に満足してる
奇跡を見たことがないからな

差別感情であったり。

帰ってきたか?ブリキの兵隊さん
誰がお前など待つ

孤独感であったり。

自分だと思っていた?
そうなの?そうなのね?
皆、自分だと思いたい

同情であったり。

大義のための死は、何よりも人間らしい

同族意識だったり。

時には誰かを愛するなら
他人でいた方がいい

深い深い愛情だったり。

こんなに複雑な感情が生まれてくるんだったらね。
もう、本物と見分けがつかないじゃない。

それでも、まだ、ね。
彼らはもっと、本物に近づきたいんだって。
もっと近づいて、近づいて。
早く、人間になってしまいたいんだって。

切ない...